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皆さんは、大学病院と一般的な病院(市中病院)の違いをご存じでしょうか。大学病院は、医学部(または歯学部)を有する大学に付属する病院であることは誰もが知っていると思います。しかし、患者の立場で利用する際には、大きな市中病院とそれほど差を感じない方が多いかもしれません。
大学病院は教育・研究機関でもあることを理解しよう
◇三つの目的
中には大学病院よりも病床数が多く、より多くの医療従事者が勤める市中病院がある医療圏もあります。必ずしも「大学病院が規模の大きな病院だ」というわけではありません。では、大学病院とはどういう機関なのでしょうか。実は、大学病院には市中病院とは大きく異なる大切な役割があります。
文部科学省のホームページでは、大学病院を(1)医師等の育成のための教育機関(2)新しい医療技術の研究・開発を行う研究機関(3)高度の医療を提供する地域の中核的医療機関-と表現し、三つの目的を併せ持つ存在であると書かれています。
三つの目的のうち、特に「教育」と「研究」は、市中病院とは異なる大学病院の「特殊性」と言ってもいいと思います。これらの目的に関して、患者さんに協力を依頼しなければならないことも多くあります。
◇現場でしか学べないことも
大学に付属する大学病院は、それ自体も教育機関として機能しています。多くの研修医をはじめ、若手の医療スタッフの養成機関として、現場教育が毎日行われているのです。もちろん、医療スタッフの教育は現場に出る前にも十分に行われるのですが、現場でしか学べないこともたくさんあります。
私たち医師は、大学6年間に膨大な量の知識を身に付け、医師国家試験に合格して初めて働き始めることができます。しかし、現場に出た途端、さらに学ばねばならない知識や技術が途方もなく多いことに愕然(がくぜん)とするのです。
これは、医師に限らず看護師や薬剤師、検査技師なども同じでしょう。学生時代に身につけた豊富な知識を土台にして、現場で直接教育を受けることで職業人として成長できます。こうした理由から、大学病院では患者さんに研修医が接したり、新人看護師がケアに携わったりする機会が比較的多くなります。
「研修医に診させるなどけしからん!」とお叱りを受けることもあるのですが、必ずバックに指導者がつき、患者さんに直接的な不利益が及ばないよう配慮されています。
現場教育なくして未来の患者さんは救えません。教育機関として大学病院が機能するよう、ご協力いただければありがたいと思います。
◇未来の患者を救う
未来の患者さんを救うためには、スタッフ教育だけでなく、医学研究も大切です。新たな薬や検査技術、治療法の開発のため、大学病院では絶えず多くの研究が行われています。
研究を目的に、患者さんの検体(血液や切除した組織など)をいただくこともありますし、臨床試験に参加していただき、細かな体調の報告をしていただいたり、アンケート調査への参加を依頼したりと、余分な作業をお願いする機会も多くあります。
また、研究への参加を依頼するたび、何枚もの同意書にサインをしていただかなければならず、患者さんを辟易(へきえき)させてしまうこともあります。
もちろん、こうした研究は患者さん自身の診断には影響のない範囲で行われますし、治療に悪影響を及ぼすこともありません。個人情報にも最大限配慮されます。
研究に参加するか否かは患者さんの自由です。「自分の病気を治すために病院に来たのであって、研究に協力するためではない」と考え、「参加しない」という意思を告げるのも可能です。研究への参加は、医師らが強制するものでは全くありません。
ただ、やはり大学病院が研究機関としての側面を持つこともご理解いただき、高度な医療と引き換えに研究にもご協力くだされば大変ありがたいと考えています。
ただし、以上のような特徴は大学病院だけのものではありません。大規模な市中病院の中には、大学病院と似た側面を持ち、教育や研究を並行して行うところもあります。医療機関のこうした役割を知っていただけると幸いです。(外科医・山本健人)
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