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血管には、酸素や栄養分を運ぶ動脈と、老廃物を運び出して心臓に戻す静脈がある。二足歩行の人間の場合、心臓は脚よりも高い位置にあるため、血液は重力に大きく逆らって心臓に戻ることになる。立ち仕事などを長期間行うと、脚の静脈内に余分な血液がたまって循環障害を起こし、うっ滞性皮膚炎を生じることがある。横浜旭中央総合病院(横浜市)下肢静脈瘤(りゅう)センター(血管外科)の白杉望センター長は「うっ滞性皮膚炎は、日頃から弾性ストッキングでの予防が大切です」と話す。
色素沈着が進行すると、やがて潰瘍に
静脈内に余分な血液がたまる状態をうっ血という。健康な人でも一日中歩いたり立ちっ放しだったりするとうっ血のために脚がむくむことがある。うっ血が慢性化して静脈内の圧力が高い状態(静脈高血圧)が続くと、血管がこぶ状にボコボコと浮き出る下肢静脈瘤が起こる。うっ滞性皮膚炎は、こうした下肢静脈瘤に伴い発症することが多い。
白杉センター長は「静脈瘤周辺の皮膚にかゆみを伴う湿疹ができたり、皮膚の色が黒ずむ色素沈着を起こしたりします。やがて皮膚や皮下脂肪が硬くなり、潰瘍ができてしまうとなかなか治りません」と説明する。
原因となる静脈瘤は、膝から足首までの下腿(かたい)部にできやすい。立ち仕事や極度の肥満など、直接的な原因で起こる1次性と、深部静脈血栓症などの他の病気が原因で起こる2次性があり、治療も異なる。診断時は、何が原因で静脈瘤が起きているのかを見極めるのが重要になるという。
▽治療は圧迫と手術
うっ滞性皮膚炎の治療は圧迫療法から開始する。「静脈内に余分な血液がたまらないよう、医療用弾性ストッキングを履いたり、潰瘍の場合は弾性包帯を巻いたりして皮膚を圧迫し、うっ血を取り除きます」と白杉センター長。1次性の場合は、皮膚症状の治癒後に血管内焼灼術などの手術で静脈瘤を根治させる。2次性の場合は元の病気の治療も併せて行う。
うっ滞性皮膚炎は重症化すると、皮膚を元の状態に戻すことが難しくなる。白杉センター長は「静脈瘤は超音波検査で診断できます。痛みやX線検査による被ばくもないので、うっ滞性皮膚炎になる前に血管外科を受診してください。
また、普段から医療用弾性ストッキングを着用すると、静脈瘤を予防できます」と話す。医療用弾性ストッキングは医療機関でのみ購入可能だ。普段から立ち仕事が多く脚のむくみが気になる人は、一度医師の指導を仰ぎたい。(メディカルトリビューン=時事)
(2020/07/25 07:00)
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