治療・予防

女性の7~8割が経験する月経前症候群
症状を記録し軽減を 東京女子医科大学東医療センター精神科 大坪天平臨床教授

 月経前症候群(PMS)は、月経の3~10日前から見られる身体・精神症状である。抑うつ、いらいら、下腹部の痛みや張り、頭痛むくみ、乳房の張りなどが出現し、月経が始まるまで続く心身の不調だ。東京女子医科大学東医療センター(東京都荒川区)精神科の大坪天平臨床教授に対処法などを聞いた。

月経前症候群(PMS)の主な症状

 ▽女性ホルモンの変動が関与

 月経のある女性の約70~80%が何らかの症状に悩まされているPMS。生活に困難を感じるほど強い症状を示す人は5.4%いるという。過去3回の連続した月経周期において、月経前5日間に精神または身体症状のいずれか一つが確認されると、PMSと診断される。

 卵巣では、卵子を包んでいる卵胞が育ち、卵子を排出(排卵)し、卵管を通って子宮へ運ばれる。この期間には、卵巣から卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)が多く分泌され、子宮の内膜が厚くなり、受精した卵が着床する準備ができる。妊娠が成立しなかった場合は、子宮内膜は剥がれ落ちて体外に排出される。これが月経だ。

 PMSの正確な原因は不明だが、大坪臨床教授は「排卵から月経までの期間(黄体期)の後半に、これらのホルモン分泌が急激に低下し、ホルモンバランスや神経伝達物質の異常を起こすことが関係すると考えられています。エストロゲンが低下する排卵時に症状が見られる人もいます」と説明する。

 PMSの重症型で、突然涙が出る、抑うつなどの精神症状が強い場合は「月経前不快気分障害(PMDD)」と呼ばれる。発症頻度は1.2%とされる。

 ▽月経周期との関連を把握

 対処法としては、出現した症状を記録し、月経周期との関連を確認することが重要となる。出現しやすい症状や頻度を把握することで、仕事や家事の量を調節し負担を軽減できるようになる。記録したものを持参して、婦人科に相談するとよい。「精神症状が強い場合には、精神科を受診してもよいでしょう」と大坪臨床教授。

 治療の基本は、十分な睡眠を取る、疲れをためないなどの規則正しい生活や運動だ。薬物療法では、漢方薬のほか、一時的に排卵を止めて症状を改善する低用量ピル(経口避妊薬)、抗うつ薬のSSRIが用いられる。カフェイン、アルコール、喫煙は控えたほうがよいとされる。「気分の変動をコントロールできず、自分を責めてしまう人やパートナーとの関係を悪化させてしまう人も少なくありません。そうなる前に医師に相談してください」とアドバイスする。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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