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低下した視力を矯正する治療法の一つとして注目されている「オルソケラトロジー」。特殊なデザインのハードコンタクトレンズを就寝中に装用して、視力を一時的に矯正する治療法だ。筑波大学付属病院(茨城県つくば市)眼科の平岡孝浩准教授に聞いた。
オルソケラトロジーの仕組み
▽中止すれば元に戻る
屈折異常(近視など)のない人では、眼内に入った光は眼球の後方にある網膜で焦点を結ぶ(ピントが合う)ため、物がはっきりと見える。近視になると焦点が手前にずれる(網膜の手前でピントが合ってしまう)ため、遠くの物がぼやけて見える。
視力の矯正法として広く行われてきたレーシック手術は、角膜をレーザーで削って角膜の形を変えて網膜にピントを合わせるようにするが、一度削ったら元には戻せない。
それに対し、オルソケラトロジーは、夜間、寝ている間だけ特殊な形状のレンズを装用して角膜を圧迫し、角膜のカーブを変化させる。これにより近視度数が減り、一時的に視力が回復する。起床後にレンズを外すが、変化した角膜の形状は外した後も一定時間保たれるため、日中は裸眼で過ごすことができる。「装着を中止すれば角膜の形は元に戻っていきます」と平岡准教授。
ただし、強度の近視や乱視、遠視、角結膜感染症、重症ドライアイ、免疫疾患、糖尿病などの患者は治療の対象外となる。平岡准教授は「適応外の人が無理に治療を受けると、角膜の傷や痛みなどの合併症が出やすいので注意が必要です」と話す。
▽近視進行抑制も
この治療を受けたい場合は、眼科での診察を受け、適用になるかどうかを判断してもらう。ここまでは健康保険が効くが、オルソケラトロジーは自由診療(保険適用外)のため、費用は自己負担になる。両眼で平均15万円程度かかる。
有効性について、平岡准教授は「治療を受けた9割の人で視力が回復しています。子どもの近視進行を抑える効果も認められています」と説明する。メガネやコンタクトレンズの使用が難しい人、激しいスポーツをする人、手術に抵抗がある人などに有用だが、最近は小中学生で治療を受ける人が増えている。
平岡准教授は「元の視力が永続的に回復するわけではありません。また、近視用コンタクトレンズと同様に、感染性角膜炎やアレルギー性結膜炎などの合併症を起こす危険性があります。必ず定期検査を受け、レンズの洗浄を毎日欠かさず行うなど適切な管理が必要です」とアドバイスする。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2020/09/16 07:00)
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