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全身の皮膚が赤みを帯び、角質がぼろぼろ落ちる紅皮症(こうひしょう)。「高齢者の場合、対応が遅れると命に関わる事態に陥りかねません」と、国立長寿医療研究センター(愛知県大府市)皮膚科の磯貝善蔵部長は注意を促す。
皮膚の赤みが急に全身に広がるようなら、すぐ皮膚科へ
▽心疾患重症化の危険も
紅皮症は、炎症を伴う皮膚の病気が全身に広がって赤くなり、角質が「ふけ」になって落ちてくる状態をいう。紅皮症の原因となる皮膚の病気には、一般的な湿疹や皮膚の慢性炎症である乾癬(かんせん)、薬剤による発疹、皮膚のT細胞リンパ腫が多いと言われる。皮膚のバリアー機能が低下している高齢者では紅皮症にかかりやすい傾向がある。磯貝部長によると、同センターの紅皮症患者は平均年齢75歳で、男女比はおよそ2対1という。
皮疹が全身に広がる紅皮症の状態では、炎症が起きている皮膚に血液を行き渡らせようとして血管が拡張する。皮膚の毛細血管が拡張したままになると発熱(37~38度)や悪寒、脱水などが起こる。特に、夏でも寒く感じるような体温調節障害による悪寒は紅皮症に特徴的だ。
さらに体で一番大きな臓器である皮膚に血管拡張があるために、循環させる血液量が増加。すると、ポンプとしての心臓に負担がかかり、持病の心不全などが悪化することもある。磯貝部長は「高齢者の紅皮症は、体力がない状態でマラソンをさせられているようなもので、もともとの心臓疾患などが重症化する危険をはらんでいます」と説明する。さらに「炎症によって皮膚表面の角質が剥がれ落ちることで、大量のタンパク質が失われ、低栄養状態を招くことがあります」と指摘する。
▽皮膚疾患の治療が基本
高齢者の紅皮症の治療では、原因となる皮膚疾患の治療が基本だ。湿疹が元で紅皮症になり、持病の心臓病が悪化した患者が、ステロイド外用薬をきちんと塗ったところ、皮膚症状が改善し、動悸(どうき)が治まることもあるという。また、薬剤による紅皮症では抗てんかん薬や抗菌薬が原因になることが多く、まず該当する薬剤の使用を中止する。
磯貝部長は「紅皮症は全身状態に影響を及ぼす疾患であり、基本的に入院が必要になります。皮膚の状態に注意し、急に症状が全身に拡大したら、速やかに皮膚科を受診してください」と呼び掛けている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
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