治療・予防 2024/12/16 05:00
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背骨(椎骨)の後ろ側を上下につなぐ「後縦靭帯(こうじゅうじんたい)」が厚みを増して硬くなり(骨化)、脊髄などの神経を圧迫して、運動障害や感覚障害を引き起こす「後縦靭帯骨化(こっか)症」。この病気に詳しい横浜南共済病院(横浜市)整形外科の三原久範部長に経過や治療法を聞いた。
脊髄を圧迫する後縦靭帯骨化症
▽進行例は1割
後縦靭帯骨化症は40代以降の中高年に発生し、男性にやや多く見られる。原因は不明だが、遺伝的因子のほか、肥満や糖尿病の合併が多いため生活習慣病が関与すると考えられている。
骨化する部位によって症状は異なる。頸椎(けいつい)部の靭帯が骨化すると、手指のしびれから始まり、物を持った感覚がなくなるなどの感覚障害、字がうまく書けなくなるなどの運動障害が起こる。胸椎部や腰椎部の場合は、脚のしびれなど下半身に症状が出る。重症になると、歩行障害や排尿・排便の障害が生じ、生活に大きな支障を来す例もある。
ただし、骨化が認められても全く症状がない人が多いという。国内の調査で頸椎のレントゲン撮影を行った患者の3%程度に骨化が認められたとの報告があるが、「私の臨床経験では、画像で異常があっても症状が出た人は1割程度で、進行した人はその10分の1程度でした」と三原部長は説明する。
▽経過観察が重要に
症状がなくても、転倒などの外傷がきっかけで症状が表れる場合もある。適切な治療で改善や進行を止めるには、「定期的に受診して、経過を見ることが重要です」と指摘する。
無症状、あるいは症状があっても軽度の場合は、頸椎の安定を保つ装具(頸椎カラー)の装着、消炎鎮痛剤の内服など保存療法が中心となる。三原部長は「カラーは柔らかい素材で首の負担を減らす構造のものを選びましょう。けん引療法が行われることがありますが、症状を悪化させる恐れがあるため慎重を要します」と助言する。
症状が重い場合は神経の圧迫を除く手術を行う。骨化部位を摘出し、その部位を患者自身の骨などで固定する「前方法」と、骨化部位には手を付けず脊髄が収まっている空間(脊柱管)を広げる「後方法」がある。骨化が大きい場合には前方法が必要となるが、慣れた施設でないと難易度が高くなるため、一般的には後方法が多く行われている。一方、日常生活での注意点としては、首を過度に後ろに反らす姿勢を取らない、ジョギングやジャンプなど振動で首に負担をかける運動を避けることが大切だという。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2021/03/29 05:00)
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