治療・予防

病気のサインかも―不正性器出血
少量でも放置せず受診を(同愛記念病院産婦人科 平田哲也部長)

 月経以外の性器からの出血を不正性器出血と呼ぶ。女性なら年齢にかかわらず起こり得るが、特に閉経後は病気のサインであることが少なくない。同愛記念病院(東京都墨田区)産婦人科の平田哲也部長は「全てが病気というわけではありませんが、閉経後の不正性器出血は、わずかな量でも必ず受診するようにしてください」と話す。

分かりやすい自覚症状を見逃さないで

 ▽がんや膣の炎症が原因

 閉経後の不正性器出血で特に注意したいのは、子宮の入り口にできる子宮頸(けい)がんや、子宮の奥にできる子宮体がんだ。平田部長は「子宮体がんは50~60代に多く、増加傾向にあります。糖尿病があったり、出産経験が無かったりする人はリスクが高いので要注意です」と説明する。標準的な治療では開腹手術で子宮を摘出するが、早期であれば腹腔(ふくくう)鏡での手術も可能だという。30~40代の発症が目立つ子宮頸がんは、閉経後に発症するケースも少なくない。手術に加え、放射線治療や抗がん剤治療を行うこともある。

 がん以外の不正性器出血で多いのが萎縮性膣炎(ちつえん)だ。閉経して女性ホルモンの分泌が低下すると、腟の粘膜が弱くなるため炎症が起こり、出血しやすくなる。腟内に挿入する女性ホルモン剤を使って、炎症を抑える治療を行う。

 寝たきりでおむつをしている高齢者の中には、大腸菌などの細菌が腟に入って炎症が起こり、不正性器出血に至る人がいる。「寝たきりの方は自分では気付くことができないので、介護をする人が注意を払ってあげると、早期治療に結び付きやすくなります」と平田部長。

 子宮体がん検診も

 一般的に、女性の閉経年齢は50歳前後であることが多い。完全に閉経していれば不正性器出血だと分かるが、閉経周辺期とされる閉経前後の数年は月経が不安定になるため、月経なのか不正性器出血なのか区別がつきにくい。そのため、平田部長は「紛らわしいときは、必ず婦人科を受診してください」と強調する。

 そもそも出血は分かりやすい自覚症状であり、見逃してはいけない病気のサインだ。平田部長は「集団健診で行われる子宮がん検診は、通常は子宮頸がん検査のことを指します。出血が続いたり、たびたび出血を起こす場合は、出血量にかかわらず婦人科を受診し、必要に応じて子宮体がん検査を受けてください」と呼び掛けている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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