治療・予防

月経痛が以前よりひどくなったら―子宮内膜症
心血管病との関連の可能性も 愛知医科大学病院産科・婦人科 若槻明彦部長

 子宮内膜症は、月経痛などにより日常生活に支障を来す病気で、最近では動脈硬化や心血管病との関連も報告されている。愛知医科大学病院産科・婦人科の若槻明彦部長は「つらい症状を我慢せず、早めに受診してください」と勧める。

痛みが前より強くなったと感じたら受診を

痛みが前より強くなったと感じたら受診を

 ▽20~30代で多い

 子宮内膜は子宮の内側にある膜で、女性ホルモンの影響を受けて周期的に剥がれ、月経血として体の外に出される。しかし、子宮以外の卵巣や腹膜などに内膜組織ができ、体外に排出されずに月経痛や炎症を引き起こすのが子宮内膜症だ。卵巣内にできる内膜組織はチョコレート嚢胞(のうほう)と呼ばれ、がん化することがある。

 子宮内膜症は10代後半~40代後半の妊娠可能な女性のおよそ5~10%に見られ、20~30代で発症する人が多いという。不妊症の原因でもある。主な症状は月経痛、排便痛、性交痛など。進行すると痛みが強まる場合が多く、閉経を迎えると症状は治まっていく。そのため、閉経まで我慢してしまう人が少なくない。若槻部長は「以前と比べて月経痛がつらいと感じるようになったら、我慢せずに受診することです」と話す。

 ▽LEP製剤で症状改善

 炎症が長期間続くことで引き起こされる代表的な病気に動脈硬化がある。動脈硬化になると、血管を柔軟に保ったり、血液の流れを一定に保ったりする血管内皮機能が低下してしまう。「私たちが行った研究では、子宮内膜症女性の血管内皮機能が低下していました。ですから、動脈硬化にも注意が必要です」と若槻部長。実際に日本の看護師を調査した研究では、子宮内膜症があると心臓病や脳卒中のリスクが高まる可能性が示されているという。

 子宮内膜症の薬物療法のうち鎮痛薬は、一時的に痛みを和らげる対症療法として使われる。一方、低用量のエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲスチン(黄体ホルモン)を配合したLEP製剤(低用量ピル)は、ホルモン療法と呼ばれ、排卵を抑え月経を一時的に止めて痛みを緩和するだけでなく、子宮内膜の増殖を抑える。

 若槻部長は「子宮内膜症の症状がある人は、少しでも早く治療を始めることで重症化を予防してください」と助言している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)


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