子宮体がん〔しきゅうたいがん〕
子宮の奥の部分(体部)に生じるがんです。子宮内膜がんともいいます。
子宮体がんは50歳代以降の閉経後の女性に多いがんで、日本では近年増加傾向にあります。子宮頸部の上皮内がんを除くと、子宮体がんが子宮がん全体の50%以上を占めるようになってきました。これは、女性の高齢化とともに、脂肪食の過剰摂取やライフスタイルの変化など、生活習慣の欧米化によるところが大きいとされ、今後ますます増加していくものと見込まれています。
[原因]
女性ホルモンが子宮体がんの多くの場合にかかわっていると考えられています。エストロゲンという女性ホルモンは、内膜を厚くするはたらきがあり、子宮内膜が長い間エストロゲンの影響を過剰に受け続けると、子宮体がんが発生しやすいといわれています。
エストロゲンの持続的な刺激を受けやすい要因として、月経不順、未出産、不妊、肥満、糖尿病、エストロゲン製剤単独でのホルモン補充療法などがあげられます。
[症状]
子宮体がんの最初の症状の80~90%は不正性器出血ですが、少量の出血から始まることが多いです。このため、更年期の女性ではがんからの不正出血を不順な月経と誤解して婦人科の受診が遅れることがあります。月経以外に出血がある場合は、婦人科医の診察を受けるようにしましょう。子宮頸(けい)がんと同様に、進行すると出血はより頻繁にあるいは持続的になり、悪臭を伴う汚い帯下(たいげ:おりもの)が出てくるようになります。
[診断]
子宮体がんが疑われる場合は、まず子宮内膜細胞診がおこなわれます。通常の子宮がん検診といわれるものは、子宮頸部細胞診(子宮頸がんを調べるためのもの)で子宮内膜細胞診とは異なります。子宮頸部から子宮体部へ細い棒を入れて子宮内膜の細胞をこすりとって調べます。少し痛みを伴う検査です。
子宮内膜細胞診で異常がみられる場合や子宮体がんが強く疑われる場合は、子宮内膜組織診がおこなわれます。子宮頸部からキュレットと呼ばれる細い棒を子宮体部に入れて子宮内膜の一部をひっかきとります。これも少し痛みを伴う検査です。検査の結果が出るには約1~2週間必要とします。
以上の検査で子宮体がんであることが判明した場合は、次にがんのひろがりを調べる検査が必要になります。MRI(磁気共鳴画像法)検査は、子宮周囲のがんのひろがりを調べるために有用な画像検査です。リンパ節や他の臓器などへの転移を調べるためにはCT(コンピュータ断層撮影)検査をおこないます。
がんのひろがりにもとづいて、進行期が決定されます。おおまかに説明すると、がんが子宮体部にとどまっているとⅠ期、子宮頸部にひろがり始めるとⅡ期、さらに進んで子宮の外にがんがひろがった場合はⅢ期、骨盤腔(くう)の外へひろがっている場合や骨盤外の臓器などへの転移がみられる場合はⅣ期になります。
[治療]
高齢者や持病があるために手術に耐えられないと判断される場合には、手術をしないで放射線療法をおこなうことがありますが、原則として手術がおこなわれます。
子宮全摘術、両側付属器摘出術(両側の卵巣・卵管をとる)、リンパ節郭清術(かくせいじゅつ)という子宮体がんが転移しやすい場所のリンパ節をきれいに取り除く手術がおこなわれます。病変のひろがりによって、子宮全摘の方法やリンパ節郭清の範囲が異なる場合があります。初期のものを中心に、腹腔鏡やロボット支援下手術もおこなわれています。手術で摘出した子宮やリンパ節の病理検査(摘出物をホルマリン処理したのちに染色して顕微鏡で調べる検査)の結果にもとづいて、追加治療が必要か判断されます。がんが子宮体部の深いところまで食い込んでいた場合や、卵巣やリンパ節に転移があった場合などが追加治療の対象になります。子宮体がんの術後治療には、抗がん薬治療と放射線療法がありますが、日本では抗がん薬治療が広くおこなわれています。
再発例では、免疫チェックポイント阻害剤のペムブロリズマブと分子標的薬(マルチキナーゼ阻害薬)のレンバチニブの併用療法が保険で投与可能となりました。子宮体がんの一部では、マイクロサテライト不安定性(MSI-High:DNAのミスマッチ修復がうまくはたらかない)を示すことが知られており、再発例において規定の検査でMSI-Highである場合には、免疫チェックポイント阻害剤が効きやすく、ペムブロリズマブを単独で投与することも可能です。
若い女性で非常に初期の子宮体がんで、これから子どもが欲しいという希望が強いときには手術しないで子宮を残し、内分泌(ホルモン)療法をおこなうという方法もあります。しかし、この方法は非常に初期の場合に限られることと、内分泌療法が十分に効かずにがんが残る場合があることに注意が必要です。ホルモン療法でがんが消失し、妊娠分娩(ぶんべん)が可能となることも多いですが、不妊症になるリスクが高いことにも注意が必要です。また、手術治療にくらべて再発しやすく、最終的に子宮全摘術が必要になる場合も少なくありません。
子宮体がんは50歳代以降の閉経後の女性に多いがんで、日本では近年増加傾向にあります。子宮頸部の上皮内がんを除くと、子宮体がんが子宮がん全体の50%以上を占めるようになってきました。これは、女性の高齢化とともに、脂肪食の過剰摂取やライフスタイルの変化など、生活習慣の欧米化によるところが大きいとされ、今後ますます増加していくものと見込まれています。
[原因]
女性ホルモンが子宮体がんの多くの場合にかかわっていると考えられています。エストロゲンという女性ホルモンは、内膜を厚くするはたらきがあり、子宮内膜が長い間エストロゲンの影響を過剰に受け続けると、子宮体がんが発生しやすいといわれています。
エストロゲンの持続的な刺激を受けやすい要因として、月経不順、未出産、不妊、肥満、糖尿病、エストロゲン製剤単独でのホルモン補充療法などがあげられます。
[症状]
子宮体がんの最初の症状の80~90%は不正性器出血ですが、少量の出血から始まることが多いです。このため、更年期の女性ではがんからの不正出血を不順な月経と誤解して婦人科の受診が遅れることがあります。月経以外に出血がある場合は、婦人科医の診察を受けるようにしましょう。子宮頸(けい)がんと同様に、進行すると出血はより頻繁にあるいは持続的になり、悪臭を伴う汚い帯下(たいげ:おりもの)が出てくるようになります。
[診断]
子宮体がんが疑われる場合は、まず子宮内膜細胞診がおこなわれます。通常の子宮がん検診といわれるものは、子宮頸部細胞診(子宮頸がんを調べるためのもの)で子宮内膜細胞診とは異なります。子宮頸部から子宮体部へ細い棒を入れて子宮内膜の細胞をこすりとって調べます。少し痛みを伴う検査です。
子宮内膜細胞診で異常がみられる場合や子宮体がんが強く疑われる場合は、子宮内膜組織診がおこなわれます。子宮頸部からキュレットと呼ばれる細い棒を子宮体部に入れて子宮内膜の一部をひっかきとります。これも少し痛みを伴う検査です。検査の結果が出るには約1~2週間必要とします。
以上の検査で子宮体がんであることが判明した場合は、次にがんのひろがりを調べる検査が必要になります。MRI(磁気共鳴画像法)検査は、子宮周囲のがんのひろがりを調べるために有用な画像検査です。リンパ節や他の臓器などへの転移を調べるためにはCT(コンピュータ断層撮影)検査をおこないます。
がんのひろがりにもとづいて、進行期が決定されます。おおまかに説明すると、がんが子宮体部にとどまっているとⅠ期、子宮頸部にひろがり始めるとⅡ期、さらに進んで子宮の外にがんがひろがった場合はⅢ期、骨盤腔(くう)の外へひろがっている場合や骨盤外の臓器などへの転移がみられる場合はⅣ期になります。
[治療]
高齢者や持病があるために手術に耐えられないと判断される場合には、手術をしないで放射線療法をおこなうことがありますが、原則として手術がおこなわれます。
子宮全摘術、両側付属器摘出術(両側の卵巣・卵管をとる)、リンパ節郭清術(かくせいじゅつ)という子宮体がんが転移しやすい場所のリンパ節をきれいに取り除く手術がおこなわれます。病変のひろがりによって、子宮全摘の方法やリンパ節郭清の範囲が異なる場合があります。初期のものを中心に、腹腔鏡やロボット支援下手術もおこなわれています。手術で摘出した子宮やリンパ節の病理検査(摘出物をホルマリン処理したのちに染色して顕微鏡で調べる検査)の結果にもとづいて、追加治療が必要か判断されます。がんが子宮体部の深いところまで食い込んでいた場合や、卵巣やリンパ節に転移があった場合などが追加治療の対象になります。子宮体がんの術後治療には、抗がん薬治療と放射線療法がありますが、日本では抗がん薬治療が広くおこなわれています。
再発例では、免疫チェックポイント阻害剤のペムブロリズマブと分子標的薬(マルチキナーゼ阻害薬)のレンバチニブの併用療法が保険で投与可能となりました。子宮体がんの一部では、マイクロサテライト不安定性(MSI-High:DNAのミスマッチ修復がうまくはたらかない)を示すことが知られており、再発例において規定の検査でMSI-Highである場合には、免疫チェックポイント阻害剤が効きやすく、ペムブロリズマブを単独で投与することも可能です。
若い女性で非常に初期の子宮体がんで、これから子どもが欲しいという希望が強いときには手術しないで子宮を残し、内分泌(ホルモン)療法をおこなうという方法もあります。しかし、この方法は非常に初期の場合に限られることと、内分泌療法が十分に効かずにがんが残る場合があることに注意が必要です。ホルモン療法でがんが消失し、妊娠分娩(ぶんべん)が可能となることも多いですが、不妊症になるリスクが高いことにも注意が必要です。また、手術治療にくらべて再発しやすく、最終的に子宮全摘術が必要になる場合も少なくありません。
(執筆・監修:東京大学大学院医学系研究科 教授〔統合ゲノム学〕 織田 克利)