治療・予防

知っておきたい「ぎっくり腰」
受診の見極めと予防法(久我山整形外科ペインクリニック 佐々木政幸院長)

 日本では成人約2800万人が腰痛を抱えている。原因が特定できないものを非特異的腰痛と言い、代表的なのが「ぎっくり腰」だ。正式には「急性腰痛」と診断され、発症直後は激痛で身動きが取れなくなるケースが多い。受診のタイミングや予防法などについて、久我山整形外科ペインクリニック(東京都杉並区)の佐々木政幸院長に聞いた。

30分に1回のストレッチがお勧め

 ▽腰椎の「捻挫

 ドイツでは、「魔女の一撃」と称されるぎっくり腰。引き金となるのは、重い荷物を急に持ち上げたり、腰を折り曲げたり伸ばしたり、あるいはひねったりする急な動作だ。せきやくしゃみ、洗面所で前かがみになっただけで生じるケースもある。

 佐々木院長は「分かりやすく言うと腰椎(腰の骨)の捻挫です。神経の痛みではなく、腰の骨と骨をつなぐ椎間関節や筋肉、骨と骨の間にある椎間板の一部などが損傷して炎症が起きると考えられています」と説明する。

 腰部には五つの骨と、その間に椎間板がある。腰部を通る神経が原因の場合、椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄(きょうさく)症などが疑われる。一方、ぎっくり腰では、本来なら筋肉や関節などが連動して滑らかに動くはずが、起床直後や寒さなどにより筋肉が十分ほぐれていない状態で急に無理な負荷がかかることで炎症が引き起こされてしまうという。

 ▽小まめにストレッチを

 ぎっくり腰と思われる痛みが生じた場合はどうすべきか。「楽な姿勢がなく、高熱があれば、すぐに医療機関を受診してください」と佐々木院長。がんや急性大動脈解離など命に関わる病気や感染症の可能性があるためだ。「痛みがあっても体勢によって痛みが和らぎ、熱もなければ、発症直後に冷やすか温めるかは自分が気持ちいいと感じる方で構いません。ただし、やり過ぎは禁物です」

 まずは安静に過ごし、少し動けるようになったら可能な範囲で日常生活を送る方が治りは早まる。特別な治療の必要はない。「ただし、数日たっても動作時に痛みがある場合には、特に高齢者は背骨の圧迫骨折のリスクもあるので、整形外科を受診する方がよいでしょう」。ぎっくり腰であれば、鎮痛薬や座薬で治療を行う。

 予防法について、佐々木院長は「デスクワークが中心の人であれば、30分に1回、数秒程度のストレッチを行うことが望ましい。椅子に腰掛けたまま、力を抜いて息を吐きながら背中を丸めます。ラジオ体操もお勧めです。幾つかの動作だけでよいので、ゆっくり行うことが重要です」とアドバイスしている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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