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骨盤内炎症性疾患(PID)は主に女性生殖器の感染症で、性行為で感染する。炎症の場所で症状が異なり、しばしばPIDと結びつかないことがある。東京ベイ・浦安市川医療センター(千葉県浦安市)感染症内科の織田錬太郎医長は「性行為がある女性なら誰でもかかる恐れがあります。再発を繰り返すと不妊リスクが高まるので、パートナーと一緒に治療をすることが必要です」と呼び掛ける。
パートナーと一緒に治療することが大事
▽見過ごすことも
原因菌として最も多いのが淋菌とクラミジアだ。両方に感染している場合も少なくない。感染したパートナーとの性行為で子宮頸部(けいぶ)から子宮内に感染と炎症が進行。卵管、卵巣に達し、腹膜や肝臓の表面にまで広がることもある。
症状は、おりものの増加や下腹部痛、不正出血や性行為時の痛み、発熱などだが、進行状況で個人差がある。肝臓の表面(皮膜)に感染が及ぶ肝周囲炎を合併すると、痛みが右上腹部に出るため、患者も医師もPIDと関係があるとは思わず、見過ごされがちだ。
「虫垂炎や胃腸炎と診断され、内科や外科を転々とするケースがよくあります」と織田医長。PIDは最終的に産婦人科の検査と診断が必要なので、おりものの増加や不正出血など、女性特有の症状を医師にきちんと告げることが正しい診断につながるという。
▽抗菌薬で治療
産婦人科では、問診や内診に加え、妊娠の有無や考えられる他の病気がないかを調べる。子宮頸部の細菌検査も行う。治療は原因菌に合う抗菌薬を2週間服用するが、卵管炎が悪化してうみがたまると手術が必要になることもある。
治療で重要なのは、パートナーと一緒に治療することだ。織田医長は「PIDで多い淋菌やクラミジアは何度でも感染します。感染のたびに不妊や子宮外妊娠の確率が高まり、慢性的な下腹部痛が残ることもあるので、一緒に治療し、治療後は予防に努めることが大切です」と強調する。再発予防には、男性用避妊具を使用するとよい。
織田医長は「PIDにはこれという特徴的な症状がありません。不妊のリスクを減らすためにも早期治療が必要です。おりものの増加や下腹部痛などの症状が続く場合は必ず受診し、産婦人科の検査時は、他の性感染症がないかも一緒に調べてもらうと安心でしょう」と話している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2021/08/08 05:00)
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