治療・予防

生活保護者に糖尿病多い傾向
~200万人のデータ分析(京都大学大学院医学研究科健康情報学 高橋由光准教授)~

 これまで生活保護受給者の糖尿病罹患(りかん)の状況は分かっていなかったが、このほど、生活保護受給者200万人のレセプト(診療報酬明細書)データを基に、全国規模の実態調査が行われた。調査を行った京都大学大学院医学研究科(京都市)健康情報学の高橋由光准教授に聞いた。

 ▽有病割合は1.8倍

 高橋准教授は仙石多美研究員らとともに、生活保護受給者の遺伝的要因や、過食や運動不足などの生活習慣から発症する「2型糖尿病」の罹患状況を調査。データを収集し、悪い生活習慣を生み出す社会や健康上の格差を是正する政策につなげることが目的だ。

 その結果、2015年の生活保護受給者の糖尿病有病割合(外来のみ)7.5%に対し、公的医療保険加入者(生活保護非受給者)は4.1%だった。特に非受給者が40代から有病割合が増えるのに対し、受給者は30~50代に増加傾向が見られた。

 この結果について、高橋准教授は生活保護受給者の食事への関心の低さを原因に挙げる。「安価なスナック菓子やレトルト食品、ファストフードには糖質や脂質が多く含まれ、そればかり食べていると糖尿病になるリスクが上がります」

 また、「うつなどの精神疾患の人が多いことも指摘されており、食生活や運動など生活習慣の改善に取り組みにくい可能性もあります」とも話す。

 ▽データで受給者支援

 生活保護制度の目的は受給者の最低限度の生活を保障し、自立の助長を図ることだ。それには経済的側面だけでなく、健康面も含まれる。

 21年1月には、生活習慣病予防などを推進するための「被保護者健康管理支援事業」が創設された。全国の福祉事務所で、生活保護受給者の健康支援を含む生活全般の環境改善を図る。

 「今回の調査データを活用し、地域の福祉事務所で実態を把握すれば、生活保護受給者の健康回復の支援になり、ひいては医療扶助費の適正化にもつながります」と高橋准教授は指摘する。

 「コロナ禍で生活困難に陥る人が増える中、自分や周りの人が将来的に生活保護を受ける可能性もあります。生きるための“最後のとりで”としての適切な医療を受けられることが重要です」と強調する。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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