治療・予防

血糖値が正常でも油断は禁物
「隠れ糖尿病」に要注意(東邦大学医療センター大森病院糖尿病・代謝・内分泌センター 内野泰准教授)

 国民病とも言われる糖尿病。健康診断でその目安となる空腹時血糖値(前日の夜から飲食を控えて、10時間以上経過後の空腹時に測定した血糖値)に異常がなければ正常とされる。しかし、空腹時血糖値が正常であっても、すでに糖尿病にかかっている場合がある。「隠れ糖尿病」と呼ばれる状態だ。どうすれば糖尿病を発見できるのか。

食後の血糖値変動の一例

食後の血糖値変動の一例

 ▽健診で見逃される食後高血糖

 ご飯、パンなどの糖質を取ると、腸で吸収され、ブドウ糖となり血液中に移行する。そのため、健康な人でも食後はブドウ糖の濃度(血糖値)が上昇するが、血糖値を下げるホルモンであるインスリンが膵臓(すいぞう)から分泌されるため、上昇した血糖値は食後数時間で元のレベルに戻る。

 ところが、糖尿病になるとインスリンの分泌が足りない、または分泌が遅いため食後の血糖値が異常に高くなり、すぐに下がらなくなる。これを「食後高血糖」と呼ぶ。初期の糖尿病糖尿病の一歩手前の予備軍の人は、食後高血糖があっても空腹時には血糖値が正常値に戻っていることが多いため、空腹時血糖値を調べる健診で見逃されてしまうのだ。

 ▽試験紙で自己チェックを

 隠れ糖尿病が怖いのは、気付かないまま心筋梗塞や脳卒中を招く恐れのある動脈硬化を進行させてしまう点だ。

 東邦大学医療センター大森病院(東京都大田区)糖尿病・代謝・内分泌センターの内野泰准教授は「空腹時血糖が正常でも、食後1~2時間の血糖値が高く、特に1デシリットル当たり180ミリグラム以上だと脳梗塞、心筋梗塞などの動脈硬化性疾患を発症する危険性が非常に高くなります。血糖値が急上昇して血管が傷みやすくなるからです」と説明する。

 しかし、食後高血糖だけを示す初期の糖尿病なら、生活習慣の改善や治療に努めれば、進行や動脈硬化性疾患の合併を抑えられる可能性が高い。

 「過去数カ月間の平均血糖値が反映されるヘモグロビンA1c値が健診で6.0%を超える人、中年以降で肥満がある人は、食後高血糖を起こしている可能性があります。近い将来、高い確率で糖尿病になるため積極的に調べることを勧めます」と内野准教授。

 最近、食後高血糖の有無を家庭で簡単にチェックできる方法として、尿を用いて調べる尿糖試験紙法が注目されている。薬局やドラッグストアで安価に購入できる。内野准教授は「食後の尿糖が陽性なら食後高血糖の状態であることが多いため、すぐに受診した方がよいでしょう」とアドバイスする。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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