治療・予防

初期は2型との区別困難―緩徐進行1型糖尿病
早期に専門医受診を(近畿大学病院内分泌・代謝・糖尿病内科 池上博司主任教授)

 糖尿病には1型と2型があり、インスリンを作れない1型には幾つかのタイプがある。中でも「緩徐進行1型糖尿病」は、インスリンがうまく働かない2型糖尿病と区別がつきにくく、治療の遅れが生じやすい。近畿大学病院(大阪府大阪狭山市)内分泌・代謝・糖尿病内科の池上博司主任教授に診断や治療について聞いた。

治療で膵臓への負担を減らすことが大切

治療で膵臓への負担を減らすことが大切

 ▽1型には3タイプ

 糖尿病は、血中のブドウ糖の濃度が適正値より高い状態が慢性的に続く病気だ。血中のブドウ糖をエネルギーとして使ったり、貯蔵したりするインスリンと呼ばれるホルモンの分泌や働きに異常が生じることで発症する。

 主に食べ過ぎや肥満運動不足などの生活習慣の関与で発症するのが2型糖尿病で、インスリンの分泌や働きが不十分で血糖値が下がりにくくなる。一方の1型糖尿病は、インスリンを作る膵臓(すいぞう)のβ細胞が破壊されて起こるため、インスリンが絶対的に欠乏する。

 β細胞の破壊は進行性で、インスリンが欠乏するまでの期間により〔1〕緩徐進行〔2〕急性〔3〕劇症―の3タイプに分類される。頻度の高い急性タイプは症状が表れてから3カ月以内で、劇症タイプはたった数日でインスリンの欠乏が進行する。緩徐進行タイプは、β細胞の破壊が3カ月以上、多くは半年から数年かけて緩やかに進行し、徐々にインスリンが欠乏していく。いずれもインスリンが絶対的に欠乏すると、インスリンを投与しなければ命を維持できなくなる。

 ▽膵臓保護が基本治療

 池上主任教授によると、痩せているのに血糖値が高い、2型糖尿病の治療を長く続けているのに効果が得られないといった場合は緩徐進行タイプの可能性がある。緩徐進行タイプの場合、初期には2型糖尿病と同様にインスリンが作られているので、両者を区別しにくい。

 「β細胞が破壊される原因の一つに、自分の細胞を攻撃してしまう自己免疫という異常があります。血液検査で抗GAD抗体という自己抗体が検出されれば、2型糖尿病と区別がつきます」

 緩徐進行タイプの治療は、インスリンの投与による膵臓の保護が基本になる。また日常生活では、2型糖尿病の治療と同様、過食を控え運動を続け、適正体重を維持することで、β細胞への負担が軽減され、インスリンの投与量や回数を減らせる場合があるという。

 池上主任教授は「緩徐進行1型糖尿病は経過とともにインスリンが出なくなるので、膵臓に負担をかけず、自分のインスリンをできるだけ保護するためにも専門医による早期の診断と治療の開始が大切です」と早めの受診を勧めている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

【関連記事】


新着トピックス