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ニコチンやアルコール、ギャンブル、違法薬物など、心身に悪影響を及ぼす行動がやめられない依存症に対して、二次的に起こり得る健康被害や社会的弊害を可能な限り減らすための対策を「ハームリダクション(二次被害低減)」と呼ぶ。国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所薬物依存研究部の松本俊彦部長に話を聞いた。
厳罰化とハームリダクションの違い
◇薬物使用者が減少
依存症治療の最終目的は使用を断つことだが、どのような治療を行っても、一部の人はまた手を出してしまう。
そこで注目されるのが、使用をやめさせることより、二次的な害を減らすことを目的とするハームリダクションだ。例えば、紙巻きたばこがやめられない人に、有害物質のタールを低減した電子たばこや加熱式たばこに切り替えてもらうことが挙げられる。
「薬物依存の場合、厳罰化すれば依存者を治療、支援から疎外し、地域で孤立させます。また、治療を提供しても、回復過程では再使用を繰り返す時期は必ずあります」
その上で「欧米諸国では、薬物用注射器の使い回しによる感染症を予防するための注射器無償交換、看護師が常駐する注射室の設置、より安全性の高い薬剤への切り替え(代替療法)などのハームリダクションの実践により、健康被害を著しく減少させ、薬物依存者の治療アクセスを高めることに成功しました」と語る。国民全体の薬物使用も増えず、国家予算の削減にも貢献しているという。
◇専門医や支援施設へ
では、日本の状況はどうか。「日本では、諸外国とは薬物乱用の状況が異なり、また、『薬物依存イコール犯罪』という考え方が根強いこともあって、欧米と同様な形での実現は難しいです」
その一方で、薬物依存からの回復を支援する、「ダルク」(東京都新宿区)などの民間リハビリ施設や、松本部長自身が取り組む覚醒剤依存再発防止プログラム「SMARPP(スマープ)」は、実質的なハームリダクションとしての役割を担ってきた。
「ダルクやSMARPPに共通するのは、利用者が万が一、薬物を使用してしまっても、決して警察に通報されたりしないこと。そのため、利用者は安心して支援や治療を継続して受けられるのです」
薬物依存から抜け出したい人は、守秘義務を順守してくれる薬物依存専門医を受診したり、全国の精神保健福祉センターやダルクなどへ相談したりするよう呼び掛けている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2023/01/21 05:00)
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