こちら診察室 依存症と向き合う

最終回 自助グループ、回復施設の役割 
医療に加え、社会資源の活用を ~久里浜医療センターの「今」~

 依存症からの回復というと、どのようなことが頭に浮かぶでしょうか。アルコールや薬物など依存となる物質の摂取をやめること、ギャンブルやゲームなどの依存となる行動をやめることでしょうか。

 ◇退院すると再発

 依存症は適切な治療と支援により、回復が十分に可能な疾患と考えられています。それにもかかわらず、実際は再発を繰り返したり、家庭問題を悪化させたりします。社会復帰を遠ざけてしまうことも少なくありません。

 依存症治療のために入院し、いわゆる「守られた環境下」に置かれると、パタリと物質摂取や依存行動が止まる人がいます。回復したように見えるかもしれませんが、退院してもとの生活に戻った途端、再発してしまうこともあるのです。

 依存症になる物質や行動は、患者の生活と密接に関わっているケースがほとんどです。回復は、ただ単に物質の摂取、依存となる行動をやめるだけでは十分と言えないのです。

 ◇生活・環境を変える

 アルコール依存症を例に考えてみましょう。

 飲酒をやめるだけでなく、(1)「飲みたい」という欲求をやり過ごす(2)寝るために毎日のんでいた酒をやめて他の手段に置き換る(3)酒を飲んでいた時間を趣味など別のことに充てる-といった努力が求められます。また、職場の同僚や友人からの「いっぱいくらい、いいじゃないか」という誘いを上手に断り続け、飲酒しない生活にしていく必要があります。

 時として、それまでの環境や人間関係を大きく変えなければならない場合もあるでしょう。ストレス解消、ゆううつな気分をごまかすために飲酒していた場合、飲酒をやめただけで悩みや苦しみは解決しません。それでは、なかなか回復とは言えないでしょう。

 生活や環境を変えていく過程で、さまざまな課題に直面します。具体的には(1)壊れかけた家族関係の再構築(2)職場で失った信用の回復(3)新たな仕事探し-などで、かつての飲み仲間や薬物仲間と疎遠にもなるでしょう。離婚の痛みを乗り越えたり、ストレスや孤独感の解消方法を考えたり、時には依存症の背景にある心のつらさと向き合う必要があるかもしれません。

 ◇不可欠な「仲間」

 社会生活や家庭に問題をかかえている人も少なくありません。そのような問題をひとつひとつ解決していくには長い時間がかかり、一人で実行し続けるのは不可能に近いでしょう。

 このような問題を解消する方法の一つに「自助グループ」への参加があります。自助グループでは、参加者から非難されることはありません。当事者が独立運営しているのが特徴で、同じような体験談、情報、知識などを分かち合い、ありのままの自分を受け入れてもらい、少しずつ自分の気持ちと向き合えるようになる仲間がいる場所です。

 依存症の回復過程は長く、時として孤独になりがちです。抱える疾患の特異性から、一般の方との普段の会話では話題にしにくい事柄もあるため、本音を言える「仲間」がいる、「場所」があることは回復のために重要で、自助グループの存在は欠かせません。

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