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体にこたえる暑さが続き、だるい、食欲がない、腹痛や頭痛といった体の不調を感じている人も多そうだ。症状そのものに薬などで対処する西洋医学に対し、全身を整えて根本的な改善を目指すのが漢方だ。詳しく知らない人はこの夏、自由研究気分で調べてみるのもいい。
暮らしに取り入れたい漢方薬
◇日本で発展した医学
漢方は中国に起源を持つ日本の伝統医学で、日本の気候風土や日本人の体質に合わせて発展した。江戸時代に確立したが、明治時代に入ると西洋医学が重要視されたために衰退。その後、西洋医学に偏った治療に懸念を抱いた医師たちが漢方と調和させる方法を考え始め、徐々に復活した。
日本東洋医学会によると、2007年からほぼ全国の大学の医学部で漢方医学教育が行われている。また、日本漢方生薬製剤協会が11年に実施した漢方薬処方実態調査によれば、医師全体の約9割が治療において漢方薬を処方していると回答。漢方は私たちにとって身近な存在と言える。
◇貴重な標本間近に
北里大学東洋医学総合研究所(東京都港区)の施設内にある東洋医学資料展示室。中国で3000年、日本で1500年に及ぶ東洋医学の歴史を解説したパネル、関連する古医書や巻物などがずらりと並ぶ。展示室の外にも、漢方薬の原材料になる貴重な生薬標本や鍼灸(しんきゅう)の資料があり、独自の治療法が連綿と受け継がれてきたことが分かる。
生薬は全て天然物で、植物の果実、根、種子、葉などのほか、キノコ類、貝殻を含む鉱物、動物など。長い歴史の中で効能が認められた生薬を、煎じたり、成分を抽出した液を粉末に加工したりして漢方薬にする。
貴重な穿山甲の標本(北里大東洋医学総合研究所・東洋医学資料展示室)
標本の中には、今では手に入らないような貴重な物も。例えば穿山甲(せんざんこう)は、爬虫(はちゅう)類のようなうろこで全身が覆われている珍しい哺乳類で、このうろこが生薬の原料とされ、密猟が絶えない。ワシントン条約で保護の対象となっており、現在は国内外での取引が禁止されている。ぜひ実物を見に行ってほしい。
「漢方は、自己治癒力を助けるという考え方」と説くのは、同大漢方鍼灸治療センターの星野卓之センター長だ。西洋医学で手を尽くしても改善しなかった患者の来院が多いという同センター。患者は「早く治したい」という思いで、積極的に治療に取り組んでくれる。星野センター長は「自分で調べて漢方薬を購入してくることもある。漢方は患者のものだなと感じる」。そんな時、効能について詳しく聞かれたら、その患者の体質を含めて話をする必要がある。対話して改善の道を一緒に探る。漢方においては、医者は症状改善をサポートする場を提供する役割のようだ。
◇バーチャルで学ぶ
生薬のにおいを体験できる=ツムラ漢方記念館
医療用と一般用医薬品を製造販売するツムラ(東京都港区)は、茨城工場敷地内にあるツムラ漢方記念館を報道陣に公開した。
館内には漢方に関する歴史的な書物はもちろん、生薬を実際に見て触ったり、においを嗅いだりできる展示コーナーも。婦人科系の症状に使われる漢方薬に配合され、血行を良くする効果を持つ「当帰」の根を嗅いでみると、鼻の奥がつんとするような独特なにおい。「漢方薬だな」と実感する。
同社の医療用漢方薬で使われる原料の生薬119種のうち、116種がガラスケースに入れられ整然と並ぶコーナーには、代表的な種だけでなく毒物として知られる種も。自然界に自生している物は、使い方で毒にも薬にもなることがよく分かる。
生薬の標本が並ぶ=ツムラ漢方記念館
残念ながら、現在は一般公開されていないが、同社のサイト上でバーチャル入館できる。製造工程や品質管理へのこだわりが学べるほか、薬草見本園のページでは代表的な生薬が紹介されている。
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