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毎年全国で約2万6千人が発症し、その半数近くが命を落とすくも膜下出血。脳を覆うくも膜の下を走る血管にできた動脈瘤(りゅう)が破裂して強烈な頭痛が起こる。
杏林大学医学部付属病院(東京都三鷹市)脳神経外科の中冨浩文教授は「くも膜下出血は突然発症するときもありますが、数日前から前兆として、軽い頭痛や首の痛み、片側のまぶたが下がるなどの目の症状が表れる場合があります」と話す。
くも膜下出血の前兆
◇まぶたが下がる
くも膜下出血は、頭蓋骨の下の3層の膜(外側から硬膜、くも膜、軟膜)のうち、くも膜と軟膜の間の出血だ。主な原因は、脳の血管の一部がこぶのように膨らんで薄くなった状態を指す動脈瘤の破裂で、強烈な頭痛や嘔吐(おうと)、意識低下が起こる。
「くも膜下出血の前兆として、数日前から少量の出血または動脈瘤の増大による軽い頭痛が続く例があります。こうした警告症状を見逃さず、軽症の段階で出血を防ぐ手術やカテーテル治療ができれば、後遺症なく社会復帰できる可能性が高くなります」
頭痛以外に、目の奥辺りにできた脳動脈瘤が大きくなり、眼球を動かす神経を圧迫すると、片側のまぶたが下がったり、物が二重に見えたりする。「これは動眼(どうがん)神経まひと呼ばれ、動脈瘤が破裂に近づいているサインです。この症状はもちろんですが、いつもと違う頭痛や首の痛みが起こったら軽視せず、できるだけ早く救急外来や脳神経外科を受診しましょう」
◇首筋、後頭部の痛み
解離性脳動脈瘤は、脳動脈の内側の壁に裂け目ができて壁内に血液が流入して膨らんだ状態になる。くも膜下出血や脳梗塞の原因になる危険な病気で、破裂してくも膜下出血を起こすと再破裂率が高い。
解離性動脈瘤の多くは、首の骨の中を通る左右一対の椎骨動脈にできる。「破裂する数日前から片側の首筋から後頭部にかけて痛みが走ることが多く、この時点で受診して診断されるケースもよくあります」
通常の頭部CT検査では、破れていない脳動脈瘤は検出できない。未破裂の脳動脈瘤の有無や大きさなどを確認するには、頭部MRA(磁気共鳴血管撮影法)検査が必要になる。
日本人の未破裂脳動脈瘤の有病率は約5%とされる。中冨教授は「くも膜下出血を発症した家族がいる人や中高年は、くも膜下出血のリスクがより高いので、脳ドックでMRA検査を一度受けることを勧めます」と助言している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2023/12/09 05:00)
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