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アトピー性皮膚炎はかゆみを伴う湿疹を発症し、慢性的に良くなったり、悪くなったりすることを繰り返す。このため生活の質(QOL)も低下するが、患者数は増加傾向にある。ひふのクリニック人形町(東京)の上出良一院長は「現在はステロイド剤が治療の中心であり、これを抜きにした治療は考えられない」と話すとともに、ピンポイントで炎症の原因に働き掛ける新しい治療薬について「治療の選択肢を広げるものだ」とし、期待をかける。
アトピー性皮膚炎の患者数の推移=厚生労働省「令和2年患者調査」より
◇皮膚のバリアーが低下
東京慈恵会医科大学病院で40年にわたり治療や研究に携わった上出院長は、次のように説明する。
「アトピー性皮膚炎は原因物質(アレルゲン)がはっきりしている花粉症や気管支ぜんそくなどのアレルギーとは異なる。アレルギーの中で最も異質だ」
アトピー性皮膚炎に苦しむ患者は多い=ひふのクリニック人形町提供
アトピー性皮膚炎に遺伝子が関係することを突き止めたのは、英国の学者だ。問題が皮膚のバリアー機能の異常にあり、そこから食物アレルギーや、ぜんそく、鼻炎といった「アレルギーマーチ」を引き起こす。皮膚がかさかさしていることに気付いた人は、バリアーの低下を疑ってほしい。
◇症状に揺れ幅
花粉症が例年2月ごろから増加するように、アトピー性皮膚炎にも季節的な要因がある。汗と空気の乾燥だ。夏は汗をかきやすく、冬から春にかけては乾燥しやすい状態が続く。ただ、厚着や暖房などで寒い季節も、汗をかくことも覚えておきたい。
「医師側にとっても大切なことがある」と上出院長は指摘する。一見、アトピー性皮膚炎に見えるが、かぶれなどの症状が反復しないリンパ腫のようなケースもある。「全身が真っ赤であれば『重症』と診断されるが、1人の患者でも軽かったり、重かったりするため揺れ幅がある」
上出良一・ひふのクリニック人形町院長
◇心理的要因も関係
発症年齢のピークは3歳ごろだが、30~40代に再発したり、高齢になってから、この病気にかかったりする人もいる。成人で発症し、皮膚ががさがさの人などはよく患部をかき、やがて無意識のうちに繰り返すようになってしまう。これが症状の悪化につながる。
さらに仕事などによるストレスが拍車を掛ける。帰宅し、家のドアを閉めた途端に皮膚をかきむしってしまう。「また、かいてしまった」と悔やんで落ち込み、さらなるストレスを生む。上出院長は「この病気では、心理的な要因も関係している」と話す。
一方、乳幼児には湿疹が見られることも少なくない。上出院長は「半年ほど様子を見ましょう」と親に言い、推移を見守る。注意したいことがある。「皮膚をかくことによって皮膚の方が『持久戦』に入り、炎症はないが、皮膚が硬くなる。「乳幼児期のじゅくじゅくした皮膚が学童期になり、かさかさ、ざらざらしたさめ肌のようになる」と、上出院長は言う。
◇「隠れ炎症」
上出院長はユーチューブで情報を発信している。それを見た患者が「薬を処方してほしい」「注射を打ってほしい」と同クリニックを受診する。「ステロイドを塗ったが、良くならない」と訴える人もいるが、この中には症状が少し改善したからと自己判断で塗布をやめてしまったケースもあるという。主治医の判断に従い、治療を継続することが大事だ。
上出院長はステロイドなどによる治療を山火事に例える。「山火事で炎は消えたが、地面で火がくすぶっていることがある。同じように、アトピー性皮膚炎でも『隠れ炎症』が存在する場合がある。最初にしっかりと抑え込むことが必要だ」
(2024/01/11 05:00)
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