治療・予防

治療の基本はステロイド
~新治療薬に期待―アトピー性皮膚炎~

 ◇有効な新薬、高価な物も

 治療薬はステロイド剤が基本だが、以前、「脱ステロイド」が声高に叫ばれたことがあった。

 「ステロイドをやめると治るという考え方は極論であり、『ステロイド恐怖症』だと言える。使い過ぎは良くないが、全く使わないで治すことは困難だ」

 ステロイドによる治療がうまくいかなかった母親が、子どもにステロイド治療をやらせないケースもある。「これは医療ネグレクトだと言ってもよい」と上出院長は言う。

 アトピー性皮膚炎のメカニズムに関する研究が進むことで、この5年間に新たな治療薬が次々に登場し、治療の選択肢が広がってきた。全身治療薬といわれるもので、注射薬のデュピルマブや経口薬のバリシチニブなどだ。「よく効くし、重大な副作用もない」。ただ、高額な薬もある。患者が加入している保険の種類や経済状態を確認した上で、治療方法を話し合って決めていく。「ソムリエが客の懐具合に応じてワインを勧めるのと似ている」と話す。

 ◇人生を元に戻

 同クリニックは「皮膚を通して患者に寄り添う」をモットーとする。顔面の炎症で苦しんでいた女性は、治療で肌がつるつるになった。「ママがきれいになったんだよ」。子どもがそう話したことを幼稚園の教諭から聞いた女性は、うれしくて泣いたという。上出院長は「アトピー性皮膚炎によって変えられた人生を元に戻し、全うできるようにする」と治療の目的を語る。(鈴木豊)

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