2024/12/04 05:00
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「先進医療」という言葉に、どんなイメージを持っていますか?
言葉の響きから、
「最先端の優れた治療」
「高額な分、効果も高い治療」
「可能なら誰もがトライした方がいい治療」
というイメージを持っている人は、多いのではないでしょうか。
もしそうなら、もう少し解像度の高い、正確な理解が必要です。
誤解も多い先進医療と標準治療
◇厚労省の定義
厚生労働省のホームページには、先進医療について以下のように説明されています。
「保険給付の対象とすべきものであるか否かについて、適正な医療の効率的な提供を図る観点から評価を行うことが必要な療養」
「将来的な保険導入のための評価を行うものとして、未だ保険診療の対象に至らない先進的な医療技術等と保険診療との併用を認めたもの」
◇先進医療と標準治療
少し難しい言葉が並んでいて分かりにくいかもしれませんが、先進医療に関する重要なポイントは、
「まだ効果が十分に確かめられていないので、保険が利かない 」
「将来的には保険が利くかもしれないが、そうならないかもしれない」
ということです。
「保険が利く 」(公費が投入されて自己負担が軽くなる)のは、効果が十分に証明された治療だけです。一般的に、このようなエビデンス(医学的な証拠)が十分にある治療のことを「標準治療」と呼びます。
「標準」の言葉の響きから、「並」というイメージを抱く人がいるかもしれませんが、「標準治療」こそが現時点での最高レベルの治療を指す言葉なのです。
◇評価定まらぬ先進医療
一方、「先進医療」は、まだ新し過ぎるがゆえに効果が定まっておらず、そのために保険が利かず、全額自費で高額です。
もう少し正確に書くと、「先進医療にかかわる費用」は全額自己負担。 ただし、それ以外の通常の治療と共通する部分(診察・検査・投薬・入院料等)の費用は、一般の保険診療と同様に扱われる、という特別なルールが定められています。
繰り返しますが、先進医療とは異なり、効果が確かめられた標準治療は一般に保険が利くため自己負担が軽く済みます 。
つまり、「効果が確かな治療ほど安い」というのが、わが国の医療における原則です。
これは、他の一般的なサービスと全く異なる医療の特殊性です。例えば、高いお金を出せばおいしい食事ができ、高級なホテルに泊まれて、高級な車に乗れるからです。
「高いお金を出せば、いい治療が受けられる」と誤解し、中にはエビデンスのない高額な民間療法に大枚をはたいてしまう人も大勢います。
日本の医療の原則を、十分に理解しておく必要があるでしょう。(了)
山本 健人(やまもと・たけひと) 医師・医学博士。2010年京都大学医学部卒業。外科専門医、消化器病専門医、消化器外科専門医、内視鏡外科技術認定医、感染症専門医、がん治療認定医など。「外科医けいゆう」のペンネームで医療情報サイト「外科医の視点」を運営し、累計1200万PV超を記録。各地で一般向け講演なども精力的に行っている。著書「すばらしい人体」「すばらしい医学」(ダイヤモンド社)はシリーズ累計20万部超。「医者が教える正しい病院のかかり方」(幻冬舎)、「患者の心得」(時事通信)ほか著書多数。
(2024/01/10 05:00)
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