治療・予防

訪問歯科診療の活用を
~命に関わる口の健康(日本訪問歯科協会 守口憲三理事長)~

 元気で長生きするためには、口の中の健康が欠かせない。歯科医院に自力で通えなくなったときに利用できる「訪問歯科診療」について、日本訪問歯科協会(東京都千代田区)の守口憲三理事長に話を聞いた。

訪問歯科診療

 ◇超高齢化で重要に

 訪問歯科診療とは、歯科医師や歯科衛生士が要介護状態の高齢者や車いす利用者、知的障害のある人などの自宅や施設に行き、歯の治療や口腔(こうくう)ケアを行うことをいう。

 超長寿社会で介護を受ける高齢者が増えているが、「身体介護が優先され、口腔(こうくう)ケアはおろそかになりがち。虫歯や入れ歯の治療だけでなく、口の中を清潔にすることも大切です」。

 毎食後、口の中の掃除をしないと食べ物の残りかすなどが付き、唾液が出にくくなる。唾液には自浄作用があり、食事で酸性になった口内を中性に戻したり、口臭を防いだりする。消化酵素の働きもあり、よくかんで食べれば消化吸収を促す。

 「汚れをほっておくと、舌の上にある味を感じる味蕾(みらい)の働きが悪くなり、食事をおいしく感じられなくなります」。その結果、食欲がなくなり、栄養不足で健康を害してしまうこともある。

 さらに口内には多くの常在菌がすみつき、歯磨きをしないと菌が増殖し、虫歯や歯周病の原因になるだけでなく、汚れた唾液が気管に入ると誤嚥性肺炎のリスクが高くなる。

 「若いときは食べ物や唾液が気管に入ったら、むせて吐き出せますが、飲み込む機能が衰えた高齢者はむせるのが難しく、誤嚥(ごえん)性肺炎を起こしてしまいます」と守口理事長は注意を促す。

 ◇専門家による食事指導も

 日本訪問歯科協会には現在、全国に約1500人の会員がいる。訪問歯科診療を受けるには、同協会のコールセンター(0120)864159に電話を。サイトから往診対応エリアを検索することも可能。認定医が自宅近くにいない場合は、各自治体の歯科医師会に問い合わせると紹介してもらえる。

 訪問歯科診療では、歯の治療や口腔ケアだけでなく、歯科医や歯科衛生士、管理栄養士、看護師らが患者が食事する様子を観察し、食べる姿勢や食事内容、誤嚥予防などを指導する「ミールラウンド」も行っている。「外部の支援を利用し、家族の負担を減らすことが介護のこつです」と守口理事長は話している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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