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長年、アルコール依存症治療に注力してきた国立病院機構久里浜医療センター(神奈川県横須賀市)の調査によると、65歳以上でアルコール問題を抱える人は増加傾向にあるという。同センターアルコール内科の医師で臨床研究部の横山顕部長は、約30年前と比べ「男性で2~3倍、女性で2倍程度に増えています」と話している。
アルコール問題で久里浜医療センターを受診(初診)した人のうち65歳以上の割合
◇転倒、骨折、発がん
高齢者は「加齢で筋肉量が減ることで、体に水分をためる『器』が小さくなり、血中のアルコール濃度が上がってしまいます」。若い頃と同じ量でも酔いやすくなるのはそのせいだ。「また、加齢で脳が萎縮するためアルコールに対する感受性が増し、転倒したり、酩酊(めいてい)したり、飲酒量の抑制が利かなくなったりします」
転倒すれば骨折や重大な傷害を負うリスクは高まり、寝たきりや死亡にもつながりかねない。多量飲酒は肝機能を低下させ骨を健康に保つビタミンDの活性を妨げるため、骨密度の低下や骨粗しょう症のリスクが高まる。認知症の合併が多いとも言われる。
中でも横山部長が強調するのは飲酒の発がんリスクだ。「特に昔、お酒に弱かった人では、咽頭や舌などの頭頸部(とうけいぶ)や食道のがんのリスクが高まります」。その他、大腸がんや胃がん、女性なら乳がんのリスクもあるという。
◇自分で減酒も
かつては「百薬の長」とまで言われたお酒。しかし、特に高齢者では飲酒の影響で食事を取らなくなる傾向があり、低栄養状態も懸念される。定年退職や配偶者との死別などで飲酒量が増えるケースも多い。〔1〕飲酒量が減らせない(コントロール障害)〔2〕アルコールが切れるとイライラする(離脱症状)〔3〕アルコール中心の生活―のいずれかがあれば、「すぐに専門医療機関を受診してください」。
とはいえ、横山部長は「アルコールに問題を抱える人は自分で決めて変わりたいもの」とも指摘する。そこで、離脱(禁断)症状がない人は、「週に1~2日の休肝日を設け、自分でできる目標を立てて飲酒日記をつけるなどして減酒に挑戦してください」と提案する。医療機関受診のハードルが高ければ、保健所に相談したり、断酒会に参加したりするのもよいという。「何より大切なのは、お酒以外の楽しみを見つけることです」とアドバイスしている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2024/08/26 05:00)
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