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難治性の呼吸器感染症の一つ、肺非結核性抗酸菌症。英語名の頭文字から「肺NTM症」とも呼ばれる。慶応義塾大学病院(東京都新宿区)臨床感染症センターの長谷川直樹教授は「病名に結核の文字が入っているため誤解されやすいのですが、あくまで『非結核性』であり結核とは異なります」と話している。細菌を吸い込んだ人の一部が感染するが、感染者から他の人には感染しない。
早めに受診する目安
◇水回りや土中の細菌
初期は無症状が多い。数年かかって進行すると、長引くせきや、痰(たん)、血が混じる血痰(けったん)が見られることも。体重減少や倦怠(けんたい)感が表れる人もいる。
「健康診断のレントゲン検査で肺に異常を指摘されたら、自覚症状がなくても呼吸器内科を受診してCT検査を受けてほしいです。最終的には痰の検査により診断します」
原因は非結核性抗酸菌と呼ばれる細菌。その種類は200を超えるが、「この病気の9割を占めるのは『MAC(マック)』菌と呼ばれる種類です」。MAC菌は畑や家庭菜園で扱う土の中、風呂場のシャワーヘッドや排水管、プールや銭湯などの水回りといった日常的な環境に生息する。そのため知らずに吸い込んでいるとされるが、感染症に至る人はごく一部だ。
10万人当たりの罹患(りかん)率を見ると、2014年の全国調査では14.7人、2017年の別のデータでは19.2人と、増加傾向にある。長谷川教授によると、今年は10年ぶりに全国調査が行われるという。「女性で、40歳代後半から70歳代くらいの中高年層、標準より痩せ形、非喫煙者に多いのが特徴です。しかし、その理由は分かっていません」
◇年1000人超死亡
肺NTM症の治療は主に抗菌薬(抗生物質)を使う。「原因菌の種類に応じて、複数の抗菌薬を組み合わせます。飲み薬で通院治療になるケースもあれば、点滴のため入院が必要なケースもあります」。MAC菌による難治性の患者に対しては、最近、吸入抗菌薬による治療も行われている。
治療せずに放置したり、治療してもなかなか改善しなかったりすると重篤化し、死亡するケースもある。2022年の厚生労働省の人口動態調査では、1158人(男性407人、女性751人)が肺NTM症で亡くなっている。
「健診で異常を指摘された、呼吸器症状が出ている、ダイエットをしていないのに半年から1年くらいの間に体重が数キロも減少した、といったような場合には、早めに呼吸器内科の受診をお勧めします。痰の検査をしっかり受けてください」と、長谷川教授は助言する。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2024/09/17 05:00)
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