せきの回数減らす新薬
~慢性咳嗽(名古屋市立大学病院 新実彰男部長)~
8週間以上続くせきは、慢性咳嗽(がいそう)と呼ばれる。ひどい場合は体力が消耗して日常生活に支障を来すが、新薬により、せきが減って生活の質が改善すると期待されている。名古屋市立大学病院呼吸器・アレルギー内科の新実彰男部長に話を聞いた。
せきが8週間以上続く慢性咳嗽
▽まず原因への対処
新実部長らの調査によると、慢性咳嗽の原因で最も多いのは「せきぜんそく」で、半数以上の患者が有していた。ヒューヒュー、ゼイゼイといった症状はなく、せきだけが出るぜんそくだ。胃酸が口の方に向かって逆流する「胃食道逆流症」が次に多く、酸が気管支の粘膜を刺激するなどして、せきが生じる。
このように原因となる病気が明らかでも、治療に難渋する場合もある。新実部長によると、慢性咳嗽患者の約2割は、適切な治療をしてもせきが残るという。
▽味覚障害の副作用も
せき止め薬は以前からあるが、脳の「せき中枢」の反応を抑えるため、喉に入り込んだ異物を反射的に排除したり、誤嚥(ごえん)を防止したりする「必要なせき」まで止めてしまうのが難点だった。別の病気の薬を難治性の慢性咳嗽に転用する方法もあるが、公的医療保険の適用外で自費診療になることや、眠気、めまいなどの副作用が障壁になる。
今年4月、新たな処方薬ゲーファピキサントが発売された。気道で刺激を感知してせき中枢に伝えるセンサー「P2X3受容体」をブロックすることで、せきの発生を抑える。従来のせき止めのような脳への直接作用ではないので、「必要なせき」に影響を及ぼさないと考えられる。
臨床試験で、難治性の慢性咳嗽患者に新薬を3カ月間飲んでもらうと、1時間当たりのせきの回数(被験者の中央値)が治療前の19.2回から8.5回に減少した。
新実部長は、原因疾患を治療してもせきが残る難治性で、生活に支障を来している患者がこの新薬の対象になるとみる。
一方、新薬を服用した患者の約6割に、程度の差はあるが、味覚障害などの副作用が表れた。薬が舌で味を感じるセンサーにも作用するためだ。新薬については、専門医に効果と副作用の両面から相談するとよいだろう。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2022/08/30 05:00)
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