非結核性抗酸菌症〔ひけっかくせいこうさんきんしょう〕 家庭の医学

 非結核性抗酸菌は水や土に広く生息する菌で、なんらかのきっかけで免疫力の低下した肺に感染し病巣をつくります。多数の菌種が知られていますが、この病気の原因となるのは約90%がマイコバクテリウム・アビウム複合体(MAC)で、約4%がカンサシ菌、約3%がアブセッサス菌です。同じ抗酸菌に属する結核菌やらい菌と異なり、人から人への感染はありません。

[症状][診断]
 健診などの際に無症状で見つかる人も多く、病気が進行すると慢性的なせき、膿(のう)状のたんが出るようになり、時に血たん、発熱などもみられます。胸部単純X線検査やCT(コンピュータ断層撮影)検査で、気道に沿って散布性の粒状影や分枝状陰影、小結節影、空洞影、気管支拡張像、などがみられます。喀(かく)たんの培養検査で同一の抗酸菌が2回以上検出されれば原因菌とみなされます。たんが出ない場合には気管支鏡を用いて病巣から採取した物の培養検査をおこない、この場合には1回検出されれば病原菌とみなされます。最近では、血清の抗体価の有用性が確立し、診断に用いられています。

[治療]
 MACによる非結核性抗酸菌症(MAC症)は進行の早い場合と何年も変化をしない場合があります。変化がない場合には、定期的にX線やCTなどの画像検査で慎重に経過をみることもありますが、2023年の治療に関する指針の改訂を受けて、より積極的に治療がなされるようになってきています。抗菌薬治療を開始するタイミングは、自覚症状が認められる場合や、X線やCTなどの画像検査で炎症の範囲が広い場合や空洞がある場合、または狭かった炎症の範囲が徐々にひろがってくる場合などです。MACに対してはクラリスロマイシン、リファンピシン、エタンブトールの3剤併用療法が基本で、最低2年程度の治療継続をおこないます。近年、MAC症の難治例では、アミノグリコシドという抗菌薬の吸入療法が使用できるようになりました。その他の抗酸菌の場合は、菌の種類によって使用する抗菌薬が異なります。病変が肺の一部に限られている場合には外科的に病変を切除する場合もあります。

(執筆・監修:順天堂大学大学院医学研究科 准教授〔呼吸器内科学〕 佐藤 匡)
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