治療・予防

子どもの慢性的な鼻詰まり
~脳の発達や機能に悪影響か(東京科学大学大学院 上阪直史教授)~

 発達期の慢性的な鼻詰まり(鼻閉)は、脳の発達や機能に重大な悪影響をもたらす可能性がある―。東京科学大学大学院医歯学総合研究科(東京都文京区)認知神経生物学分野の上阪直史教授らが行ったマウスの実験で明らかとなった。

慢性的な鼻閉の原因になる病気

 運動能力低下や活動量減少

 鼻が詰まり、空気の通り道が狭くなると、鼻呼吸が障害され、肺に取り込む酸素量が減ってしまう。

 鼻呼吸障害は、睡眠障害、記憶・学習能力の低下、歯並び、かみ合わせにも悪影響があるとされている。「しかし、脳の機能に鼻呼吸障害がどのような影響を及ぼすかは、明らかではありませんでした」

 そこで上阪教授らは、脳の発達や機能に対する鼻呼吸障害の影響を調べた。発達期に相当する生後3日齢・3週齡のマウスと、成熟後に相当する2カ月齢のマウスを使用。片方の鼻の穴をふさいで慢性的な鼻呼吸障害の状態にしたところ、発達期のマウスで運動能力の低下やうつ病に似た行動・症状(活動量の減少や無気力など)が増加した。こうした異常は、成熟後のマウスでは見られなかった。

 さらに生後3日目~3週目の鼻呼吸障害は抑うつ行動と関係し、3~7週目の障害は運動能力の低下と関係することも分かった。

 ◇成長後も異常続く

 運動機能や社会性に関わる小脳の変化を調べた結果、成長期の鼻呼吸障害マウスで、神経回路の形成が阻害されたり、主要な神経細胞が異常な活動をしたりするといったことが観察された。

 「鼻呼吸が発達期における脳の正常な発達と機能維持に不可欠であり、発達期に鼻呼吸障害で生じた脳の異常は、成長後も残ることが分かりました」

 慢性的な鼻閉の原因になる病気には、アレルギー性鼻炎、鼻の奥にある副鼻腔(びくう)に炎症が起こる「副鼻腔炎」、鼻の奥にあるリンパ組織の塊であるアデノイドが大きくなる「アデノイド肥大」、鼻の穴を分ける仕切り部分の鼻中隔が左右どちらかに曲がっている「鼻中隔わん曲症」などがある。「子どもの鼻閉が続くようなら、早めに医療機関を受診することをお勧めします」と上阪教授は話す。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

【関連記事】

新着トピックス