花粉症、症状出る前に効果的な治療を
~初期療法と花粉の除去・回避で乗り切る~
近年、夏の日照時間増加と降水量減少により、翌年のスギ花粉の飛散量は「前年に比べ多い」状況が続いている。今年も同様だといい、花粉症の人にとっては悩ましい季節がやってきた。重症化を防ぐための花粉の回避の仕方や治療について専門家に聞いた。

花粉症に悩む女性(イメージ)
◇初期療法をしっかり
「花粉症の重症」とは、①一日のくしゃみの回数が11回以上②鼻をかむ回数が一日11回以上③鼻が詰まっているため、一日のうち口呼吸する時間がかなり長い―などが目安と言われる。飛散量が多い年は、患者の50%以上が重症を訴えるという。
生活の質(QOL)を数値化する調査では、軽症や中等症の患者に比べ、重症者は大きな影響を受けていることも判明した。国際医療福祉大学成田病院耳鼻咽喉科・頭頸部外科の岡野光博医師は「花粉症の治療では重症化させない。『重症化ゼロ』を目指さなくてはならない」と話す。
症状が出る前、あるいは軽症のうちに治療を始めることが、重症化予防の第一歩だ。それには初期療法が有効で、かゆみや炎症を引き起こすヒスタミンの作用を抑える抗ヒスタミン薬、鼻の粘膜の炎症を抑える鼻噴霧用ステロイド薬などが一般的な治療薬として使われている。

国際医療福祉大学成田病院耳鼻咽喉科・頭頸部外科の岡野光博医師
◇意外と知らない花粉症のメカニズム
花粉症は、花粉を吸い込むと、すぐに発症するわけではない。
鼻から侵入したアレルゲン(花粉)が鼻腔内の粘膜に付着すると、免疫細胞が「異物」と認識する。異物に対抗するため体内に抗体(IgE抗体)が作られ、ヒスタミンなど化学伝達物質を蓄えたマスト細胞という細胞に結合する。その後、再びアレルゲンの侵入が繰り返されると、抗体が付着したマスト細胞が増加。ある一定の量に達すると「感作」となる。いわば、発症の準備完了といった状態だ。
度重なるアレルゲンの侵入でついに抗体が反応すると、マスト細胞が活性化。ヒスタミンなどの化学物質を放出し、攻撃が始まる。ヒスタミンは、タンパク質の一種であるH1受容体と結合し、くしゃみや鼻水などのアレルギー反応が引き起こされる、といった仕組みだ。
◇抗ヒスタミン薬は初期療法にぴったり

花粉症の発症の仕組み(日本医科大学大学院医学研究科頭頸部感覚器科学分野 大久保公裕教授提供)
抗ヒスタミン薬は、放出されたヒスタミンとH1受容体の結合を阻害することで症状を抑える。
ヒスタミンに反応するH1受容体は「非活性型」と呼ばれていて、結合すると「活性型」に変化する。抗ヒスタミン薬はこれらに作用する。
一方、H1受容体には「元から活性型」も存在し、同薬はヒスタミンのない状態の「元から活性型」にも効果があることが分かっている(インバースアゴニスト作用)。岡野医師は「こうした作用機序からも、抗ヒスタミン薬による初期療法が有効だということが分かる」と指摘する。
初期療法における抗ヒスタミン薬は、花粉の飛散数によって効果が上下することが分かっていて、1平方センチ当たり2000個以下であれば重症化の予防が期待できるとされている。大量飛散(2000個以上)、超大量飛散(5000個相当)だと、くしゃみなど鼻の症状は悪化することから「ステロイド薬との併用療法が必要になる」(岡野医師)。
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(2025/02/07 05:00)