治療・予防 2025/05/02 05:00
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~「聴こえ8030運動」(愛媛大学 羽藤直人教授)~
「近視大国」といわれる日本。視力を矯正するため、眼鏡をかけたり、コンタクトレンズを装着したりする人は多い。レーザーで角膜を削るレーシック手術を受ける人もいる。最近、注目され始めたのが眼内コンタクトレンズ(ICL)による角膜を削らない視力矯正だ。ICLを使う治療に詳しい眼科専門医は「各国でも安全性が証明されている」とした上で、「眼鏡、コンタクトレンズに次ぐ視力矯正の3番目の選択肢になる。ぜひ、専門医に相談してほしい」と強調する。
角膜の縁を約3ミリ切開し、レンズを挿入する
◇75カ国以上で使用
ICL手術は、角膜の縁を約3ミリ切開してレンズを挿入する。レンズの大きさは1センチ強で、柔らかく、無色・透明だ。効果が長期間持続し、特に強度の近視・乱視に有効とされている。必要に応じてレンズを取り外し、手術前の状態に戻せる点がレーシックと大きく異なる。現在、世界75カ国以上でICLが用いられているという。
文部科学省の学校保健統計調査によると、裸眼視力が1.0未満の小児の割合は年々、増加している。スマートフォンやパソコン、タブレット端末、ゲーム機などを日常的に長時間使用することが近視の主な原因の一つと考えられ、「近視人口」は今後も増えていくと予測されている。
◇近視の人は災害時に不安
ヘルスケア企業スターサージカルが視力1.0未満の20~40代の男女300人にインターネットで調査した。それによると、近視が気になる人に不安や困り事として認識されているのは、①災害時の不安②花粉症③ドライアイ④煩わしさ―だった。調査対象者のうち眼鏡・コンタクトレンズの使用者231人に災害時の備えに関して聞いたところ、55.8%が不安を感じる一方、「枕元のすぐ手に取れるところに眼鏡・コンタクトを置いている」など具体的な対策をしていないのは43.7%に上った。
清水公也氏
◇合併症はほとんどなし
山王病院アイセンターの清水公也センター長(国際医療福祉大学教授)は、レーシックの最盛期当時からICLの利点に着目、開発や改良に携わってきた。2008年にレーシック治療をやめ、ICL一本の治療に切り替えた。レーシックでは視力が徐々に落ち、ドライアイになる可能性があるからだ。清水氏は「ICLは他の近視・乱視治療に比べ、合併症がほとんどない」と強調する。
レーシックに関するトラブルの背景には過大な宣伝に加え、高度な知識を持たない医師が手術を行ってきたこともあると指摘されている。清水氏は「ICL研究会」を立ち上げ、手術後も長期に渡り安全性を確保することに努めている。
◇ICL研究会が専門医認定
グランドセントラルTOKYOアイクリニックで主任執刀医を務める市川一夫氏は、通常のコンタクトについて「使用年数が長くなるほど角膜内の細胞を痛めやすい。20代後半でも、細胞の機能が急激に低下する人もいる」と指摘する。
市川一夫氏
「最も安心して使える。きちんとした医師が手術をすれば、問題はない」
市川氏はモンゴルに出張し、ICL手術を教えている。気候が厳しいモンゴルの大草原では、遠方を見ることが重要だ。ただ、砂ぼこりのためにコンタクトは向かない。こうした例を踏まえ、市川氏は「ICLが近視治療のメーンになりつつある」と言う。
ただ、ICLも手術を伴う以上、安全性の確保が不可欠だ。清水氏は「10年間の経過を診ないと安心とは言えない。ICLの実績に関しては、開始から28年がたっているが、失明など取り返しのつかない症状はなかった」と説明する。
研究会はICLの専門医を認定している。研究会の中核的メンバーが認定医資格を取りたいという各地の医師の下に赴き、審査する。清水氏は「認定医となり、勉強を続けることで患者にとって安心・安全な治療を提供できる」と話す。(鈴木豊)
(2025/04/23 05:00)
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