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外来で熱中症の方を診療した経験が何度もありますが、患者さん、あるいは周囲の人の誤解が症状を悪くしていると感じることがよくあります。今回は、熱中症に関してよくある間違いを三つ指摘したいと思います。まずは熱中症について、最初にごく簡単に説明します。
熱中症は、長い時間高温な環境にいることで生じる全身性の障害のことです。倦怠(けんたい)感やめまい、頭痛、吐き気、筋肉痛、筋肉のけいれんなど、多彩な症状をともないます。重度になると、意識を失ったり、肝臓や腎臓などの臓器障害が起こったりして、命の危険が生じることもあります。
一つは、体温調節機能が低下していて、うまく体温の調整ができなくなっていること。もう一つは、持病のために脱水になりやすくなっていることです。
例えば、糖尿病の方は尿で水分が奪われやすく、脱水になりやすい傾向があります。また、高血圧や心臓、肝臓などの病気で利尿薬を飲んでいる方も同じく、尿から水分が失われやすくなっています。
一方、乳幼児は、体温調節機能が未熟であることと、体重あたりの体表面積が大きく、体表から水分が失われやすいことが原因です。
◇若い人の対策
確かに、熱中症は一般には上記のように説明されます。高齢者や乳幼児が、熱中症で救急搬送されたり、命を落としたりするケースも夏場には多く見られます。しかし、一般的な病院では、熱中症で受診される患者さんの多くは10歳代~50歳代くらいの比較的若い方です。
典型的なケースは、暑い環境で長時間スポーツをした中学生・高校生、工事現場など炎天下で肉体労働をされる若い方の軽度の熱中症です。
周囲の人も、若くて元気な人の熱中症のリスクをそれほど重く考えていません。普段元気なだけに、多少の暑い環境でも無理して作業を続け、あまり水分をとらないのでしょう。
また、若い方が室内で熱中症になることもあります。炎天下でないから、と油断して対策を怠るためですが、室内でも高温多湿の環境であれば熱中症にかかりやすくなります。体育館でのバレーの練習中に熱中症の症状を訴えて受診した高校生もいれば、キッチンで火を使って長時間料理をしていて熱中症になった主婦の方もいます。
よく考えると当たり前なのですが、熱中症は日中の暑い時間帯の活動性が高い若い方にも起こりやすい病気です。これは環境整備によって容易に予防できます。エアコンや扇風機、保冷剤などの使用、涼しい場所での適度な休憩、適切な水分補給を現場でルール化する必要があります。
(2018/07/11 10:00)
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