一流に学ぶ 「女性外来」の先駆者―対馬ルリ子氏
(第8回)
遅い受診、残念な思い強く
晩婚化で、足遠のく産婦人科
「30歳を過ぎて1回も子宮がん検診を受けたことがない人も多いが、最初に受けた検診で嫌な思いをしたので、二度と行きたくないという人もいました。私としては、そういうのが一番残念で仕方がありません」
こうした思いを抱えながら、対馬氏は米国をはじめ海外のウィメンズヘルスセンターを視察。日本にも同様のセンターを作りたい思いを強くした。「米国やカナダ、オーストラリアの女性医療センターは、女性の健康をトータルに診ることができる施設。気軽に定期検診や健康相談に行ける場です。妊娠や病気のときだけ受診する、日本の病院の産婦人科とはまったく違っていました」
帰国後すぐ、都立墨東病院に思春期から老年期まで、女性の生涯にわたる健康を扱う総合ヘルスケアセンターを作る、あるいは大学に女性の健康の総合講座を設けたいと考え、企画書を書き、都や大学に提案した。しかし、それらはことごとく却下された。
「領域侵犯だというんです。日本では小児科、精神科、内科、老年科がそれぞれ領域を守って仕事をしている。産婦人科が産婦人科以外の領域はできないって。『それじゃあ、いつになったらできるんですか』と聞くと、『30年ぐらい先ならできるかも』と言われました」
対馬氏は当時40歳。このままでは自分が現役の産婦人科医として働いている間には女性総合医療はできない。何とか打開策はないかと模索する日々が続いた。(ジャーナリスト・中山あゆみ)
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(2018/03/15 10:00)