一流に学ぶ 「女性外来」の先駆者―対馬ルリ子氏

(第8回)
遅い受診、残念な思い強く
晩婚化で、足遠のく産婦人科

墨東病院周産期センター医長の時。右端が対馬氏
 「もっと早く、産婦人科にかかっていれば、こんなことにならなかったのに」。東京都立墨東病院周産期センター医長になった対馬ルリ子氏は、日々の診療の中で何度となくこうした思いに駆られた。病院に来るのは病気になってトラブルが大きくなった患者ばかり。特に救命救急センターに運ばれる患者には、医師としてとても残念に思うケースが多かったという。

 ある日の深夜、下腹部の激痛で10代の女性が救急車で運ばれた。急性腹症のため当直の救命救急医が緊急開腹手術を行った。このような場合、外科医は普通、みぞおちから恥骨の上まで約30センチを開腹し、病変部はすべて切除する。そして、翌朝、産婦人科に回されてきた。

 「性感染症のクラミジアを放置したため、卵管から腹腔(ふくくう)内まで感染が広がっていたのです。もっと早く、感染が広がる以前に産婦人科にかかっていれば抗生剤を飲むだけで治ったのに。おなか切られて、大きな傷が残って本当にかわいそうで。こういうケースは結構あるんですよ」

 妊娠したと思って産婦人科を受診したら、子宮頸(けい)がんが進行していたと分かり、子宮全摘出を余儀なくされるケースもまれではない。2000年に女優の向井亜紀氏がこの経験を公表し、検診の大切さを訴えたが、いまだに子宮がんの検診受診率は3割程度(2016年国民生活基礎調査)にすぎない。

 晩婚化が進み初産年齢が30歳を超えた。「産婦人科は妊娠した人が行く所」と思っていると、産婦人科にかかるタイミングが遅くなり、妊娠と病気が同時に見つかるケースが増えてくる。

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