一流に学ぶ 日本女性初の宇宙飛行士―向井千秋氏

(第5回)石原裕次郎の受け持ち医に =大スターにも身構えず

 ◇カンフー姉ちゃん

 向井氏の誠実な応対ぶりに、石原事務所のスタッフたちからは「カンフー姉ちゃん」と呼ばれ、親しまれた。白いズボンと上着が中国拳法カンフーの胴着に似ていたからのようだ。月曜日に1週間分の下着を持って病院に行き、院内では私服は着なかった。米国のメディカルドラマ「ベン・ケーシー」の登場人物をまねて、下着の上に白衣を着ていたという。

 石原氏が麻酔から覚め、気管から装着されたチューブが抜かれると「ああ、先生、大海原をさまよっている感じがしてましたよ」と話した。手術後の第一声に、向井氏は「ヨットマンらしくて、なんかロマンチックな人だなあと思った」と印象を語る。

 難しいといわれた解離性大動脈瘤(りゅう)の手術は成功し、奇跡の復活と話題になった。連日の報道で、病院の屋上からガウン姿で手を振っていた姿を思い出す人も多いだろう。

 「男の軍団ね、石原軍団の人たちは、すごく気持ちのいい人たちだったですね。私はもともと体育会系だから。あれ、体育会の気質なのね」

 病院周辺には大勢のファンやマスコミが押しかけ、大スターの回復を見守った。騒然とした周囲の様子にひるむ間もなく、向井氏の日常は慌ただしく過ぎて行った。(ジャーナリスト・中山あゆみ)

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