日本女性初の宇宙飛行士―向井千秋氏|一流に学ぶ
宇宙から教育現場へ
向井千秋氏がスペースシャトル・コロンビア号に搭乗した1994年7月、多くの人が宇宙からのテレビ中継を見守った。日本人女性初、心臓外科医から宇宙飛行士への転身というバックグラウンドも大きな話題になり、今でもその姿は鮮明に人々の心に残っている。98年には2度目の宇宙飛行で、医師としての経験を生かした数々の実験を行った。あれから二十数年。仕事場を宇宙から地上に移しても、宇宙医学の研究、後進の指導にと活躍を続け、その勢いは衰える兆しもない。現在は東京理科大学の特任副学長として、国際化、女性活躍推進などに携わり、独自の教育プログラムを開発し、陣頭指揮を執る。「私が医者になれたのも、宇宙飛行士になれたのも教育のおかげ。だから私は教育のパワーを本当に信じているの。最近の学生は発想も豊かだし、自由で肩の力が抜けている。日本の未来も決して暗くないと思いますね」と目を輝かせる。(ジャーナリスト・中山あゆみ)
向井 千秋氏(むかい・ちあき) 1952年群馬県生まれ。77年慶応大医学部卒、同大卒の女性として初の心臓外科医に。85年、日本人女性初の宇宙飛行士に選出。86年向井万起男氏と結婚。88年医学博士。94年7月スペースシャトル・コロンビア号、98年10月ディスカバリー号に搭乗。2000年慶応大医学部外科学客員教授、04年国際宇宙大客員教授。07年宇宙航空研究開発機構有人宇宙技術部宇宙医学生物学研究室長、14年日本学術会議副会長、15年富士通社外取締役、東京理科大副学長、16年東京理科大特任副学長。