一流に学ぶ 角膜治療の第一人者―坪田一男氏

(第8回)マラソン、ミュージカル企画=角膜移植啓発のために


 ◇自ら原作を書く

 アイバンクの啓発活動はこれだけではない。2008年に坪田氏が原作を書いたミュージカルも上演した。大学病院のアイバンクを舞台に、研修中の角膜移植コーディネーターの成長を通して、命の尊さと見える幸せについて問い掛ける内容で、再生医療に関して坪田氏と親交のある京大の山中伸弥氏もビデオメッセージを寄せている。

 「アイバンクのことを多くの人に知ってもらいたいと思っても、なかなか関心を持ってもらえなくて困っていました。ちょうど、うちの子どもたちが小さい時からミュージカルをやっていたことにヒントを得て、『そうだ、ミュージカルなら楽しく伝わるはずだ』と思い付いたんです」

 ミュージカルを見たことをきっかけに、アイバンクへの登録を考えてくれる人が現れるなど、角膜移植やアイバンクについての理解を深めるのに役立っている。2008年の初演以来、毎年公演されるロングランとなっている。

 ◇一流シェフたちが協力

 2006年からは、坪田氏の支援者により毎年盛大なチャリティーパーティーが開かれている。人気のスターシェフがボランティアで料理の腕をふるい、チャリティーオークションで集まったお金はアイバンクと再生医療研究の費用として寄付される。坪田氏は毎回、感謝の気持ちとともにシェフが着ていたシェフコートを競り落とし、教授室の壁に額装し飾っている。ウエスティンホテル東京総料理長の沼尻寿夫氏をはじめ、東京吉兆の湯木俊治氏、オテル・ドゥ・ミクニの三國清三氏、トゥーランドット遊仙境の脇屋友詞氏、四川飯店の陳建一氏ら、そうそうたるシェフが名を連ねてきた。

 「資金集めっていうと大変なイメージがあるかもしれません。でも、仲間が集まれば、人のつながりも広がるし、みんなで取り組むチャリティーは楽しい。楽しんでごきげんにやることが大事だと思っています」

(ジャーナリスト・中山あゆみ)


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