一流に学ぶ 角膜治療の第一人者―坪田一男氏
(第8回)マラソン、ミュージカル企画=角膜移植啓発のために
海外からの輸入角膜に頼ってばかりはいられない。角膜移植を希望する人にできるだけ早く手術を行うためには、角膜移植の重要性を広く社会に理解してもらい、日本国内で角膜提供者であるドナーを増やす必要がある。そのために坪田氏は、さまざまな啓発活動を行ってきた。
◇ドナーの思い
1997年から毎年、10月の体育の日に開催している「ドナーファミリーの集い&Run For Vision(ラン・フォー・ビジョン)」は、角膜を提供してくれたドナーへの感謝と慰霊とともに、アイバンクの啓発を目的としたイベントだ。ドナーファミリーの集いでは、移植を受けた人、角膜を提供した人、アイバンクのスタッフ、医療従事者らが一堂に会する。移植を受けた人たちからの喜びの声が伝えられた後、ドナーファミリーが角膜の提供に至った思いが語られる。
14歳の長男を亡くした父は、普段から家族で話して決めていた通りに角膜を提供したという。「たった14歳で亡くなり、もっといろいろなものを見せてあげたかった。移植を受けた患者さんの体をお借りして、きれいなもの、素敵なものを見せてあげられればという気持ちです」
そんなドナーの思いと感謝の声が、毎年、ドナーファミリーと患者との間でシェアされる。そういう場が日本にはなかったのだ。
千鳥ケ淵公園(東京都千代田区)をスタートに皇居を走るマラソンは10キロ、5キロコースのほかに1キロのウオーキングコースも設けられ、一般と視覚障碍者合わせて240人が参加。視覚障碍者にはボランティアが伴走する。このイベントは現在、角膜センター・アイバンクと慶大眼球銀行ほか各地のアイバンクが共催、厚生労働省をはじめ8団体が後援、35もの企業が協賛するイベントに発展してきた。2017年10月で20回を迎える。
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(2017/09/05 14:25)