一流に学ぶ 減量手術のパイオニア―笠間和典医師
(第8回)
海外の公開手術で評価
実績重ね、日本でも認められる
手術で肥満を治療するという認識がない日本で減量手術を続けていくのはまだ難しいと考えた笠間和典氏は、次の一手を打った。積極的に海外の学会に出かけて行って発表し、手術のビデオを見てもらう機会をつくるようにしたのだ。
すると、公開手術を行ってほしいという依頼が来るようになった。活動の場を海外に広げていくには、群馬では地の利が悪いからと、転職を勧めてくれたのが、2005年に開設された四谷メディカルキューブ(東京都千代田区)だった。逆境の中でも踏ん張っていれば、応援してくれる人は必ず現れるものだ。
「手術前は、『先生、顔真っ青だけど大丈夫ですか』って聞かれるほど緊張して、本当に自分でも喉が渇いてどうしようもない状態でした。でも、手術室に入って、いざ手術となると集中できて、全く緊張しませんでした」
公開手術が評価されると、また別のところから声がかかり、出かけていく。そうやって一歩一歩、減量手術の実績と評価を海外で積み重ね、日本でも認められるようになった。
「子どもの時、ブラック・ジャックに憧れたのは、いろんな国に行って公開手術をするのがカッコいいな、外科医になって、こういうことがやれたらいいなと思っていたんですよ」
12年にはニューヨークで開催される国際学会での公開手術を依頼された。しかし、米国での手術は医師ライセンスの問題があるため、現実的には難しい。すると、東京での手術をライブ中継してほしいという話になった。
「日本での手術映像をライブで米国に送るというのは日本の外科の世界で初めてだったんです。機材もないし、どうやったらいいかも分からない。相談するうちに、九州大学の先生が機材も技術者も無償で提供すると申し出てくれました」
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