新米医師こーたの駆け出しクリニック

検査が陰性なら出社していいのか 専攻医・渡邉昂汰

 「インフルエンザコロナウイルス感染症も陰性ということは、あすから仕事に行っていいのでしょうか?」

 先日、職場でインフルエンザがはやっている発熱患者さんの診察をした際に、こんな質問がありました。この患者さんが勤めている会社の就業規則では、インフルエンザコロナウイルス感染症にかかった場合は出勤停止になるそうです。一方、普通の風邪と判断されれば、そのような決まりはありません。「検査で陰性なら出社してよいだろう」と考えるのは無理もないと思います。

インフルエンザなどは検査しても感染が分かるとは限らない。疑いがあれば慎重な対応を

インフルエンザなどは検査しても感染が分かるとは限らない。疑いがあれば慎重な対応を

 ◇検査は絶対ではない

 しかし、先ほどの質問には「インフルエンザコロナウイルス感染症に準じて、お休みしてください」と答えました。両疾患の抗原検査の感度は60%程度とされており、感染者の半分弱は陽性になりません。つまり、検査が陰性でも罹患(りかん)している可能性は拭えないのです。

 「そんな確率なら検査をする意義がないのではないか」と思った方は鋭い視点を持っています。実は、私が研修医だった5年前は、インフルエンザ流行期に①突然の発症②38.0度以上の発熱③上気道炎症状④全身倦怠(けんたい)感―などの全身症状の四つがそろえば、検査を行わずにインフルエンザと診断し、診断書の発行や抗ウイルス薬の処方をしていました。

 ◇コロナ流行で必要に

 翌年からコロナウイルス感染症の流行が始まりました。そして現在起きているのが、インフルエンザとの同時流行です。重症化リスクの高い方には、それぞれ投薬治療が必要になるため、これらをよく調べて区別する必要性が出てきました。ここにきて抗原検査を行う意義が高まり、検査せざるを得ない場面が増えたのです。その結果、検査は共に陰性だったが、コロナウイルス感染症インフルエンザを否定できない患者さんの発生が相次いでいるというのが現状です。

 法に基づく明確なルールがないため、従業員の出社可否を判断する立場の方も、迷うケースが多いかと思います。インフルエンザコロナウイルス感染症も、高齢者が中心ではありますが、重症化や合併症による死亡例がなお報告されており、恐ろしい病気です。コロナ下同様に、症状があったら休ませたり、在宅ワークなどに切り替えたりといった対応をお願いします。(了)

渡邉昂汰氏

渡邉昂汰氏


 渡邉 昂汰(わたなべ・こーた) 内科専攻医および名古屋市立大学公衆衛生教室研究員。「健康な人がより健康に」をモットーにさまざまな活動をしているが、当の本人は雨の日の頭痛に悩まされている。


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