一流に学ぶ 減量手術のパイオニア―笠間和典医師

(第8回)
海外の公開手術で評価
実績重ね、日本でも認められる

 ◇新しい術式を開発

 患者は北海道に住む30代の男性。重症肥満糖尿病のコントロールがうまくいかずに困っており、手術の公開を快諾してくれた。

 術式は笠間氏が開発し、07年に初手術を行った腹腔鏡下スリーブ・バイパス術(2018年に先進医療として認可)。現在、保険適用されているのは、胃を10分の1程度に小さくして食事摂取量を制限するスリーブ(袖)状胃切除術のみだが、この術式に小腸を短くして栄養吸収制限も加えたルーワイ胃バイパス術を合体させた。

 「スリーブ術だけでは体重減少効果が不十分なケースがあります。ルーワイ胃バイパス術は食事制限と栄養吸収阻害の両方ができるので効果は大きく、特に糖尿病に対する効果はかなり期待できるのですが、胃を小さく切った後、使わない胃がそのまま体内に残ります。日本人は胃がんのリスクが高いので、切った胃を取り出すほうがいい。両方の術式のいいとこ取りをしたわけです」

 この手術は極めて難易度が高いため、5~6時間はかかるのが普通だという。笠間氏はこの時、2時間余りで終えてしまった。

> 「自分でも『ゾーンに入った』と思ったんですが、本当に素晴らしい手術ができました。患者さんは手術前、糖尿病の治療のためにインスリンを大量に使っていたのですが、手術後はピタリと使わなくて済むようになり、すごく喜んでくれました」

真剣な表情で公開手術に臨む笠間和典氏

 この患者は体重が術後約1カ月で10キロ減少し、約1年半後には40キロ減った。その後、糖尿病の薬を使うこともリバウンドすることもなく、健康な状態をキープしている。(ジャーナリスト・中山あゆみ)

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