治療・予防

脚の筋力維持につながる可能性
~タウリン摂取量多いほど(国立長寿医療研究センター 堂本隆史研究員)~

 アミノ酸の一種で、魚介類に多く含まれるタウリン。国立長寿医療研究センター(愛知県大府市)などによる研究で、摂取量が多いほど中高年の脚の筋力維持につながり、高齢者の筋力低下を抑える働きがある可能性が示された。同センター老化疫学研究部の堂本隆史研究員に研究結果について話を聞いた。

タウリンが多く含まれる食品

タウリンが多く含まれる食品

 ◇生活習慣病のリスクが低下

 タウリンは「細胞機能を調節するなど、体内の機能を一定の状態に保つ役割を果たす、生命維持に必要不可欠な物質です」。肝臓など体内でも作られるが、それだけでは足りないため食事から取る必要がある。「カキ、アサリなどの貝類、タコやイカ、サンマなどに豊富に含まれます」

 ヒトへの投与試験では糖尿病、脂質異常症、高血圧などの生活習慣病のリスク低下、持久運動能力の向上、認知症患者の認知機能改善などが見られた。ただし、食事からのタウリン摂取量が筋力などの体力指標に及ぼす長期的な影響を調べた研究はこれまでなかった。

 ◇1日1回は魚介類を

 堂本研究員らのグループは、同センターの老化に関する長期追跡データを分析。2002~04年と8年後(10~12年)に行った調査参加者のうち、40歳以上の男女1454人を対象にした。

 その結果、〔1〕40歳以上〔2〕40~64歳〔3〕65歳以上の3群の8年後の体力指標は、タウリン摂取量が多い群ほど、歩行、起立などと関係する膝伸展筋力が増加していた。

 65歳以上の8年後の膝伸展筋力は、摂取量にかかわらず低下したが、摂取量が多い人ほど低下の幅は小さかった。摂取量が多い人は、加齢に伴う筋力低下が抑制される可能性も明らかになった。

 また研究開始時、対象者は1日平均208ミリグラムのタウリンを取っていたが、8年後の摂取量は約20%減少しており、近年の魚介類摂取量の減少を反映していることが推測された。

 高齢者がタウリンを効果的に取れる食事として、「魚介類を1日1食程度取るとよいでしょう。タウリンは水に溶けやすい栄養素のため、刺し身や汁物、炊き込みご飯などがお薦めです」と堂本研究員はアドバイスする。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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