女性アスリート健康支援委員会 宮嶋泰子、女性アスリートを大いに語る

アスリートに欠かせない心のリカバリー
~「時には心を緩めてほしい」~ ―女性トップ選手の苦心・奮闘を密着取材 宮嶋泰子氏―(6)

 ◇「引退後もスポーツに関わる人生を歩んでほしい」
  自分の取材人生で出会えた最高のアスリートは小平奈緒

宮嶋さん

宮嶋さん

 ―宮嶋さんのお話は、女性アスリートだけではなくスポーツを愛する選手にとって、必ず参考になると思います。

 「もう一つ付け加えていいですか。これまで私が見てきたトップアスリートと言われる選手って、意外とリタイアしてしまうとスポーツと縁を切る方が多いのです。バレーボールの金メダリストでも『もうボールなんか見たくもない』と言う人もいます。五輪で金メダルを目指すような人たちにとって、トレーニングは楽しいことばかりではなく、辛いこともたくさんあったろうし、いろんな思いがあるに違いありません。

 でも、スポーツをする喜びを持ち続けてほしいし、引退後もスポーツに関わる人生を歩んでほしいです。『ボールを見たくもない』からキッパリ止めてしまうようにはならないでほしいですね。そのためには、いい競技生活を送らないといけないということです。その後のためにも。無理やりやらされて『もうこんなの嫌だ』ではなく、進んでスポーツに取り組んでほしいです。

全日本距離別スケート・引退レースの女子500メートルを滑る小平奈緒さん(10月22日)

全日本距離別スケート・引退レースの女子500メートルを滑る小平奈緒さん(10月22日)

 スピードスケートの小平奈緒さんが面白いことを言っていました。ハラスメントのことを質問したときに、『今やっている重いバーベルを挙げるトレーニングがハラスメントだと思えば、こんなすごいハラスメントはない』と。これって辛い極地じゃないですか。でも『これは強くなるために自ら進んでやっていることだと思えば何ともない』と言うんです。そのプロセスで一つひとつ学びを得ようとしている小平さんは、私の取材人生の後半で出会えて良かったと思う選手です。

 それは、彼女が単に強くなろうとしているだけではなく、そのプロセスでいろいろ工夫しながら学んでいこうとしているからです。子どものころの夢は学校の先生になることだったそうですが、自分を豊かにしていくためにこのスポーツをやっているという姿勢が、どんな場面でも感じ取れました。先ほど、最も印象に残った選手は誰ですかと聞かれましたが、小平さんがその答えになります。小平さんは、本当にいろいろ工夫していました。スポーツって、もちろん勝ちたいと思って練習に励むのだろうけど、それをすることで自分にどれだけいろいろなものが得られるのか、そう思ってやるのが人生ですね」

 ―本日は大変貴重なお話をしていただきました。宮嶋さん、川原会長、ありがとうございました。(了)

 宮嶋泰子(みやじま・やすこ) テレビ朝日にアナウンサーとして入社後、スポーツキャスターを務め、スポーツ中継の実況やリポート、ニュースステーションや報道ステーションのスポーツディレクター兼リポーターとして活躍。 1980年のモスクワ大会から平昌大会まで五輪での現地取材は19回に上る。2016年に日本オリンピック委員会(JOC)の「女性スポーツ賞」を受賞。文部科学省中央教育審議会スポーツ青少年分科会委員や日本スポーツ協会総合型地域スポーツクラブ育成委員会委員、JOC広報部会副部会長など多くの役職を歴任。20年1月にテレビ朝日を退社、一般社団法人カルティベータ代表理事となる。

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