「医」の最前線 緩和ケアが延ばす命

迫る死への苦悩と向き合う
スピリチュアルペインを知っていますか-緩和ケア〔8〕

 先述の論文では、このような苦悩が七つにまとめられています。

これまで宗教や神に興味がなかった方も、それを知りたいと願われたりすることも

(1)意味への問い
 「これじゃ生きていても意味がない」などと人生の意味や目的を失って苦悩する。生きる意味や存在の価値等に対する問い。
(2)死に対する不安
 「死そのものへの不安」「死への過程の不安」「死後の不安」などの死に関連する不安。
(3)尊厳の喪失
 病状の悪化に伴う身体機能の低下で、特に排せつが自立できなくなり、また日常生活等を他者に依存しなければならないことで、自尊心の低下につながり、尊厳が喪失することの苦悩。
(4)罪責意識
 「役割を果たせない申し訳なさ」「他者の迷惑になる」「人生への後悔」「罪への報いとして病になった」などの苦悩。
(5)現実の自己への悲嘆
 自分が思い描く姿と現実とのギャップの苦痛や、希望の喪失。
(6)関係性の喪失
 他者との親密な関係性を続けることが困難になっての孤独や、死による別れの苦悩。
(7)超越的存在への希求
 神や宗教など、これまであまり関心をもつことがなかった人間や現世を超越した世界に対する希求。

話しても無駄と思わずに、思いを伝えてみることが大切。そこから発見があるかもしれません

 確かにこれらは、死が迫っている方や非常に重い病気の方から、しばしば聞かれる苦悩です。そして身体の苦痛や一部の精神的な苦痛と比べて、薬剤などで緩和するのが難しい苦痛でもあります。

 それでは一体どうしたら良いのでしょうか。

 ◇忌憚なく話せる場

 もちろん最近では、臨床宗教師など一般的な医療で手が届かない場所をカバーするような職種も生まれてきています。私もチャプレン(病院など教会の外で働く聖職者)がいる病院で働いたことがありますが、確かにそのような患者さんの苦悩に援助を提供していました。

 自分がこのような苦悩を抱えた時はどうしたら良いのでしょうか。

 先の文献は、あくまで終末期のがんの患者さんを中心としたものですが、それに限らず私たちは、人生における重大な出来事や病、心身のトラブルを抱えた時に同じように存在に関するつらさを抱える可能性があると考えます。

 一つの解決策としては、忌憚(きたん)なく話せる場を確保することです。私たちは対話を通して自分にとって真に大切なものを見いだしたりすることがあります。

 対話が寸断されてしまうと、深いところまでたどり着けません。やりとりを通して次第にスピリチュアルペインを緩和する何かが浮き彫りになることがあるのです。

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