「医」の最前線 緩和ケアが延ばす命

迫る死への苦悩と向き合う
スピリチュアルペインを知っていますか-緩和ケア〔8〕

 ◇新しい物語を自らの中から

 緩和ケア医の岡本拓也先生は『わかりやすい構造構成理論 ~緩和ケアの本質を解く~』で、スピリチュアルペインを緩和しうる方法の一つである傾聴を次のように説明しています。

 「『志向相関的に聴くことを通して、傾聴する対象となる人が自分自身の存在と自分の人生を肯定できるような新しい物語(構造)の再構成ができるように援助する行為』と捉えることができる」「『傾聴』という援助を通して、患者や家族の中から、彼/彼女のQOLを改善するような物語を引き出し紡ぎ出す」

 私たちは話すことで、現在の苦悩(スピリチュアルペインを含む)を改善する新しい物語を自らの中から見つけられる可能性があるのです。

 少しずつそのような対話を提供してくれる場も出てきています。がんカフェや、私が行っている早期からの緩和ケア外来など、スピリチュアルな問題に関しても自由に話せる場も探せば見つかるようになってきています。

 生きる上で避けられないスピリチュアルペイン。少しでも皆さんそれぞれの解が見つかることを願っています。(緩和医療医・大津秀一)

大津 秀一氏(おおつ・しゅういち)
 早期緩和ケア大津秀一クリニック院長。茨城県出身。岐阜大学医学部卒。緩和医療医。京都市の病院ホスピスに勤務した後、2008年から東京都世田谷区の往診クリニック(在宅療養支援診療所)で緩和医療、終末期医療を実践。東邦大学医療センター大森病院緩和ケアセンター長を経て、遠隔診療を導入した日本最初の早期からの緩和ケア専業外来クリニックを18年8月開業。
 『死ぬときに後悔すること25』(新潮文庫)『死ぬときに人はどうなる 10の質問』(光文社文庫)など著書多数


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