慢性期のめまい 家庭の医学

 めまい疾患の急性期は数時間から1~2週間程度しか続きません。めまい疾患は、地震や台風のように忘れたころにやってきます。慢性期ではからだのバランスの異常がおもな症状で、歩行時フワフワするとか、まっすぐ歩くことができない、いっぽうにかたよる(偏倚〈へんい〉する)などをうったえます。
 このうちの4割程度が持続性知覚性姿勢誘発めまい(PPPD)といわれています。この疾患は次の特徴があります。
1.浮遊感、不安定感、非回転性めまいのうち一つ以上が、3カ月以上にわたってほとんど毎日存在する
2.持続性の症状を引き起こす特異的な誘因はないが、立位姿勢、能動的あるいは受動的な動き、動いているものあるいは複雑な視覚パターンを見たときに増悪する
3.めまい、浮遊感、不安定感、 あるいは急性・発作性・慢性の前庭疾患、他の神経学的または内科的疾患、心理的ストレスによる平衡障害が先行する
4.症状は顕著な苦痛あるいは機能障害を引き起こす
5.症状は他の疾患や障害ではうまく説明できない

[治療]
 急性期のめまいは安静にすることが第一です。根本的治療より、対症療法が中心です。抗眩暈(こうげんうん)薬、抗ヒスタミン薬、循環・代謝改善薬を使います。良性発作性頭位眩暈では、浮遊耳石置換法(Epley法)をおこなうと症状が消えることが多いのですが、再発する場合は生活習慣の見直しも必要です。
 寝るときにどちらかの耳を下に寝ていると、その耳で症状が出やすくなるので、耳を交互に下にして寝るなどの工夫も必要です。また、ベッドの上でからだを左右に数回横倒しにするなどの理学療法(Brandt & Darroff法)も再発予防に有効です。前庭神経炎では、急性期には副腎皮質ステロイド薬の投薬をおこない、障害を軽くするような治療をします。めまいが落ちついたら、からだをよく動かすなどリハビリテーションをすることで回復が促進されます。PPPDに対しては抗うつ薬、前庭リハビリテーション、認知行動療法などがおこなわれます。

(執筆・監修:東京大学大学院医学系研究科 教授〔耳鼻咽喉科・頭頸部外科〕 山岨 達也
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