メニエル病 家庭の医学

 メニエルは、フランスの19世紀の医師の名前です。メニエルが1866年に発表した「白血病で亡くなった少女の側頭骨に出血があったことから、めまいは内耳の病気にある」と述べた論文が高く評価され、後世の人が、この少女がめまい、耳鳴り、難聴を呈したことから、類似の症状をメニエル病と呼ぶようになりました。
 メニエル病の現在の診断は、①回転性めまい発作をくり返す、②低音部の難聴を伴う。めまい発作をくり返すたびに難聴が進行する、③めまい発作の前駆症状として耳鳴りが生じ、発作時は耳鳴りが強くなる、④バランスがとれなくなる、⑤悪心(おしん)・嘔吐(おうと)を伴う、が重要な判断の要素です。
 メニエル病の原因はいまでもわかりませんが、ストレスや睡眠不足が引き金となりやすいのです。急性期は、からだを動かすとめまいがさらに誘発されることが多いため、症状の出現しない体位をとり安静にします。


[治療]
 発作期には炭酸水素ナトリウムの静脈注射、鎮静薬、制吐薬を用います。落ちついてくると鎮暈(ちんうん)薬、ビタミン薬、抗不安薬などを用います。また、こまめに水分を補給すること、十分な睡眠をとりストレスをかかえないこと、有酸素運動をすることがすすめられています。これらの治療で軽減せず、発作をくり返して生活に支障がある場合は、中耳内へのステロイドまたはゲンタマイシンの投与や内リンパ嚢開放術などの手術も適応となります。
 難聴が重い場合は残存聴力を犠牲にした内耳破壊術や前庭神経切除術もおこなわれていましたが、近年では保存的療法を選択することがふえています。
 メニエル病はめまいの病気のなかでもっとも深刻なため、耳鼻咽喉科のめまい専門医によく診てもらうことが大切です。めまいをうったえる病気は多数ありますが、真のメニエル病はまれであり、めまいの専門医でなければ正しく診断ができません。できるだけ早く専門医を受診するようにしましょう。

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