山岨達也 医師 (やまそばたつや)

東京大学医学部附属病院

東京都文京区本郷7-3-1

  • 耳鼻咽喉科 ・聴覚音声外科
  • 科長、教授

耳鼻咽喉科 神経内科

専門

耳科学、聴覚医学、平衡神経科学

山岨達也

人工内耳手術、中でも小児の手術、療育では国内でもトップクラスの実績を誇り、小児難聴外来を持つ。術後の処置が重要になる小児の手術では、医師と専任の言語療法士が連携し、チームを組んで治療方針を決定している。また高度の内耳奇形や髄膜炎後の蝸牛骨化など困難な手術でも、術後の改善が予測できる場合は積極的に手術を行い、すべての例において成功を収めている。さらに術後成績が不良であった外耳道閉鎖症例に穿通枝遊離皮弁を用いた新しい手術を開発し、画期的な成功を得ている。成果が治療に活かせる研究にも力を注ぎ、老人性難聴の発症仕組みの解明、有毛細胞の再生など幅広く研究を進めている。

診療内容

東京大学医学部附属病院の耳鼻咽喉科は専門外来を多く持つが、山岨医師率いる小児難聴外来もそのひとつである。「近年、新生児スクリーニング(新生児を対象とした先天性の代謝異常や分泌異常の検査)の普及により、難聴が疑われ、精密検査を希望して来院する患者さんが増えています。こういったお子さんの聴力検査、難聴児への補聴器装用・聴能訓練施設の指示、先天性高度難聴児の人工内耳適応への決定、小耳症・外耳道閉鎖症・外耳道狭窄症の治療にとくに力をいれています」と山岨医師は語る。
検査は条件詮索反応(COR)、歪成分耳音響放射(DPOAE)、聴性脳幹反応(ABR)、定常状態誘発反応(ASSR)、 前庭誘発筋電位(VEMP)など多岐に渡って行われ、必要に応じて側頭骨高分解能CT、頭部MRIなども撮影する。通常外耳道狭窄の手術は6歳以降、閉鎖症は8歳以降に行なわれ、同科では狭窄症はすべての例において聴力が改善されている。
「閉鎖症の場合は聴力やCT検査の結果や、症状が片側か両側かなどを参考に、中耳の奇形の程度を判断して聴力改善手術が可能か、決定します。再建した鼓膜が浅在化(正常より外側で治癒してしまう)することがあり、時に手直し手術を追加することがあります。数年前から植皮の代わりに穿通枝遊離皮弁を用いるようにしたところ鼓膜の浅在化や感染は激減し、高度な中耳奇形以外では聴力は著明に改善されています」と山岨医師は言う。日本全体の人工内耳手術の中でも、小児例は増加の傾向にある。
「2000年には17歳以下の小児例は人工内耳手術全体の30数%でしたが、2009年には6割を占めるようになり、そのうち3歳以下の幼児が30%を占めています。成人では術後ほとんどの場合聴力の改善がみられますが、小児の場合、術後の療育や訓練が重要です。手術がゴールではなく、そこから言語力を伸ばしていくことが重要だからです。当科では多くの難聴児訓練施設と密接な連携を持っていることが、手術例増加の1つの要因です」と山岨医師は話す。
成人の場合も含め、人工内耳手術が可能かどうか、まず聴力・補聴効果などの評価を行い、CT・MRIを用いて内耳の状態を診断する。その上で患者に人工内耳に関するさまざまな資料を提供し、最終的な判断をする。この段階で人工内耳の効果があまり期待できない症例も確実に選り分けており、不要な手術は回避している。手術終了後も「人工内耳の調整、聴能訓練、定期的な検査を行っています」と丁寧なアフターケアを行っている。高度の内耳奇形や蝸牛骨化など手術の困難な症例においても全例手術を成功させ、顔面神経麻痺や電極脱落例が全く無いなど、同科は極めて高い技術を誇っている。これらの実績からも難聴児訓練施設と厚い信頼関係を築き上げているのである。
山岨医師はまた、難聴に対する基礎的な研究を基に臨床の治療法を開発する、いわゆるトランスレーショナルリサーチに力を入れている。聴力温存型人工内耳の開発、両耳人工内耳に関する研究、耳鼻咽喉科領域のアンチエイジング医学の研究、再生医療など、さまざまな研究が進行中である。

医師プロフィール

1983年3月 東京大学医学部 卒業、竹田総合病院、日立総合病院にて研修、亀田総合病院耳鼻科部長を経て
1993年 東京大学耳鼻咽喉科講師
1996年2月~1998年5月 Michigan大学Kresge聴覚研究所に留学
1999年 東京大学耳鼻咽喉科助教授
2007年 東京大学耳鼻咽喉科教授