腎移植〔じんいしょく〕

 慢性腎臓病(CKD)の治療法として紹介します。
 さまざまな原因(糸球体腎炎、糖尿病腎症、嚢胞〈のうほう〉腎など)により腎臓のはたらきがほとんど失われてしまった場合(慢性腎臓病の末期)には、血液透析、連続携行式腹膜透析(CAPD)、腎移植がおこなわれます。
 腎移植には、親族などから腎臓を提供してもらう生体腎移植と、亡くなった人から提供してもらう献腎移植の2種類があります。
 生体腎移植、献腎移植のいずれの場合も、腎臓提供者(ドナー)と腎移植を受ける患者(レシピエント)の免疫学的な相性(組織適合度など)を事前に確認する必要があります。手術としては、レシピエントの骨盤部に腎臓を移植します。腎臓の動脈を内腸骨動脈とつなぎ、腎静脈と外腸骨静脈をつなぎ、さらに尿管と膀胱をつなぎます。

 移植後は、レシピエントは拒絶反応を防ぐために数種類の免疫抑制薬を飲み続けなければなりません。抑制が弱いと移植した腎臓に対して拒絶反応が起こりますが、抑制が強過ぎると感染症が起こりやすくなります。免疫抑制薬の開発や術後管理の標準化が進んだことで、移植腎の1年(5年)生着率(植えた腎臓がはたらいているレシピエントの割合)は、生体腎で95(80)%、献腎で90(70)%くらいです。
 腎移植は、腎臓提供者がいなければ成り立たない医療です。移植した腎臓もすべてが生着するわけではありません。しかし、腎臓の生着期間中のレシピエントは、腎臓のもつすべてのはたらきを取り戻すことができる点で、根治的治療法とみなすことができます。
 最近わが国での移植に大きな変化が起きています。従来はABO血液型やHLA(Human Leukocyte Antigen)(ヒト白血球抗原)(体内に侵入した異物を認識し排除するはたらきをする)が異なったりした場合には移植はできませんでした。しかし、免疫抑制薬の進歩や移植前に血漿交換療法をおこなうことにより、これらの問題が解決されました。その結果、夫婦間移植やABO不適合移植が全体の3分の1から半分近くを占めるようになっています。さらにこれらの移植後の生着率もほぼ従来のHLAやABOマッチした移植の成績と遜色なくなってきました。

(執筆・監修:医療法人財団みさき会 たむら記念病院 院長 鈴木 洋通)
(執筆・監修:東京大学大学院医学系研究科 教授〔泌尿器外科学〕 久米 春喜)
医師を探す

関連トピックス

関連ニュース

厚労省記者クラブから