現状と考えかた

　年齢によっても異なりますが、日本の女性全体では、出生数と中絶数の合計を妊娠の数と仮定すると、妊娠した女性の約15％が人工妊娠中絶をおこなっています。また、中絶手術の経験率は女性の11.9％、そのうち反復中絶経験率は24.1％との調査（日本家族計画協会「第９回男女の生活と意識に関する調査」）もあります。

●５歳階級別出生数、中絶数と中絶選択率（2023年度全国）

年齢（歳）	出生数A	中絶数B	中絶選択率 B/(A+B)%
＜20	4,352	10,053	69.8
20～24	47,195	32,547	40.8
25～29	189,338	27,879	12.8
30～34	265,109	22,600	7.9
35～39	173,523	21,379	11.0
40～44	46,020	11,170	19.5
45～49	1,645	1,073	39.5
50≦	100	15	13.0
全年齢	727,288	126,734	14.8
厚生労働省令和５年人口動態調査と令和５年度衛生行政報告例より作成

　避妊が妊娠を避けるための手段であるのに対し、人工妊娠中絶は、妊娠を継続できない事情がある場合に、子宮内に妊娠が成立したあと胎児を子宮外に排出して妊娠を終了させるものです。出産することができないのならば、避妊法を徹底し、万一避妊法が充分でなかったときは緊急避妊をおこなって、できるかぎり妊娠を避けるべきです。しかし、妊娠してから出産できない諸事情が発生した場合や性暴力被害などによって予期せぬ妊娠をする場合などもあり、人工妊娠中絶を選択せざるを得ない場合もありえます。
　避妊しなかった、あるいは避妊の失敗等で人工中絶手術に至った場合、中絶手術をくり返さなくてすむよう、産婦人科医とよく相談し避妊の方法を見直すことが大切です。

（執筆・監修：恩賜財団 母子愛育会総合母子保健センター 愛育病院 名誉院長 安達 知子）