法律 家庭の医学

 人工妊娠中絶については、母体保護法の第14条で「妊娠の継続又は分娩が身体的又は経済的理由により母体の健康を著しく害するおそれのある」場合や、「暴行若しくは脅迫によって又は抵抗若しくは拒絶することができない間に姦淫されて妊娠した」場合などには人工妊娠中絶手術を受けることができるとなっています。手術はそれぞれの地域の医師会で指定する医師(母体保護法指定医師)が、その医師の勤務する指定された医療施設で、本人と配偶者の同意を得ておこないます。
 配偶者、または「届出をしていないが事実上婚姻関係と同様な事情にある者」の同意が必要ですが「配偶者が知れないとき若しくはその意思を表示することができないとき又は妊娠後に配偶者がなくなったときには本人の同意だけで足りる」とされています。2021年3月に人工妊娠中絶時の「配偶者の同意」について、厚生労働省は、ドメスティックバイオレンス(DV)などで婚姻関係が事実上破綻している状況であれば、配偶者の同意を得ないで、本人の同意のみで足りるとする見解を示しています。
 なお、合法的に人工妊娠中絶がおこなえるのは、胎児が母体外において生命を存続することのできない時期とされる満22週未満、つまり妊娠21週と6日までです。

(執筆・監修:恩賜財団 母子愛育会総合母子保健センター 愛育病院 名誉院長 安達 知子