統合失調症の成人患者では、オランザピン(OLZ)とsamidorphan(SAM)の組み合わせ(OLZ/SAM)がOLZ単独と同等の有効性を示す一方で、OLZ関連の体重増加を軽減させることが示されている。米・Icahn School of Medicine at Mount SinaiのRené S. Kahn氏らは今回、体重増加リスクが高い若年成人患者を対象に、OLZ/SAMとOLZ単独の第Ⅲ相ランダム化比較試験(ENLIGHTEN-Early試験)を行った。その結果、成人患者と同様に、発症初期の若年成人患者においてもOLZ単独と比べOLZ/SAMは体重増加を有意に抑制し、安全性プロファイルは両群で同程度であったと、J Clin Psychiatry2023; 84: 22m14674)に報告した。

発症から4年未満、累積服薬期間24週未満の患者が対象

 対象は、統合失調症統合失調症様障害、双極性障害Ⅰ型の発症から4年未満、BMI 30未満、抗精神病薬の累積服用期間が24週未満の若年成人患者(16~39歳)426例(平均年齢25.8±6.0歳、男性66.2%)で、OLZ/SAM群(OLZ 5〜20mg/日、SAM 10mg/日、経口、211例)とOLZ単独群(5〜20mg/日、経口、215例)にランダムに割り付けた。平均BMIは23.69±3.3で、統合失調症が62.9%を占めていた。

 主要評価項目は、ベースラインから12週までの体重変化、副次評価項目は12週時に体重が10%または7%以上増加した患者の割合、ウエスト周囲長の変化、臨床全般印象度-重症度評価尺度(CGI-S)スコアの変化とした。

体重増はOLZ/SAM群で3.37kg、OLZ群で4.70kg

 解析の結果、ベースラインから12週時の体重変化の最小二乗平均(LSM)±標準誤差(SE)は、OLZ群の6.77±0.60%に比べOLZ/SAM群では4.91±0.60%と有意に低かった〔群間差のLSM±SE-1.87±0.745%、95%CI -3.33〜-0.41、P=0.012〕。この間の体重の平均変化量は、OLZ/SAM群で3.37kg、OLZ群で4.70kgだった。

 12週時に体重が10%以上増加していた患者の割合は、OLZ群の30.4%に対しOLZ/SAM群では21.9%と少なかったものの、両群に有意差はなかった〔オッズ比(OR) 0.64、95%CI 0.39〜1.05、P=0.075〕。

 12週までに体重が7%以上増加した患者の割合は、OLZ群の44.8%に対しOLZ/SAM群では33.1%(OR 0.61、95%CI 0.39〜0.94)、ウエスト周囲長の変化はそれぞれ3.90cm、2.99cm (LSM±SEの差 -0.92±0.58cm、95%CI -2.06〜0.22cm)と、いずれもOLZ群に比べOLZ/SAM群で良好だった。

CGI-Sスコアの改善度、有害事象の頻度は同程度

 CGI-Sスコアは、OLZ/SAM群ではベースラインの3.87から12週後には3.12へと改善し(変化量のLSM±SD -0.82±0.06)、OLZ群でも同程度の改善(同-0.73±0.061)が示されたことから、臨床的有効性は両群でほぼ同等と考えられた。

 有害事象は、OLZ/SAM群の63.5%、OLZ群の63.3%に報告された。体重増加(OLZ/SAM群 21.8%、OLZ群 25.6%)と眠気(同10.9%、9.3%)の頻度が高かったが、ほとんどが軽度〜中等度だった。重篤な有害事象はそれぞれ8例(3.8%)、8例(3.7%)に発現した。

 Kahn氏らは、「OLZ/SAMは、OLZによる体重増加のリスクが高い発症初期の患者においても、OLZと同等の抗精神病効果を発揮しつつ、体重増加のリスクを低減することが示された」と結論。「今回の結果を既報の知見と統合すると、OLZ/SAMは発症初期と後期双方の患者でOLZによる体重増加を軽減することが示唆される」と付言している。

 なお、OLZ/SAMは、統合失調症および双極性障害Ⅰ型の成人患者に対する治療薬として2021年に米食品医薬品局(FDA)によって承認されている。日本では未承認。

(菅野 守)